「触る」ことを大切にしてきた視覚障害者の強みを生かした資格「触診師」

 日本人が生涯のうちにがんにかかる可能性は、男性の2人に1人、女性の3人に1人と推測され、部位別では男性1位が胃がん、女性1位が乳がんとのこと。がんは早期発見・早期治療が重要。この早期発見の段階で視覚障害者ならではの活躍の場があるのではないでしょうか。
 視覚障害者は、その研ぎ澄まされた触察力を基盤に、あんまマッサージ指圧や鍼灸によって国民の健康の保持増進、疾病の治療に寄与してきました。今回の応募は、この視覚障害者のもつ触察力を、乳がん検診や診察時に生かす「触診師」の導入です。乳がんの検診や診察においても最先端の医療機器が導入されているものの、医師による触診も重要だそうです。もちろん「触診師」は、しこりの有無や程度を判断するのみですが、専門医以上に微小なしこりを発見できるのではないでしょうか。人間ドッグ等で導入できれば、より早期の発見につながるかもしれません。実際には、医療、福祉、教育、労働等を巻き込む一大プロジェクトとなり、実現へのハードルが高いことは承知していますが、視覚障害者の強みを生かせる職域の拡大に一石を投じることができるのではないでしょうか。
 これから社会に出て活躍する子どもたちが「見えなくたって人の役に立てる!」という生きがいを感じられるようになることを願っています。

審査員コメント

 実現可能性としては難しいと感じますが、強みを仕事に変えるという中で思い切った発想だと感じます。こういうことが研究されてできると良いです。

プロフィール

 

青木 隆一
現在は千葉県教育庁特別支援教育課に勤務しています。以前千葉盲学校で教員をしていたころ、ある生徒から「視覚障害者は、マッサージや鍼灸の仕事に就くしかないのか?」と聞かれ答に窮しました。現実はまだまだ厳しかった。以降、視覚障害者ならではの職業開拓を考えてきました。今回の応募が何かのきっけかになれば幸いです。

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