情報セキュリティ分野におけるシステムの研究・開発。
視覚障害者(とくに全盲の場合)のシステム開発分野の仕事は、パソコンがCUIベースだった時代に一度活発になったものの、その後Windowsが普及し、GUIが一般的になって以降は難しい状況となっています。
現在、私は情報セキュリティを中心としたシステムの研究・開発に従事しています。情報セキュリティ分野が視覚障害者にとって有利なポイントは、オペレーティングシステム(OS)の内部の情報を調査したり、ログを解析したりと、画面に依存せずに直接、データを取り扱うことができることが上げられます。
弊社が提供しているセキュリティ監視サービスで利用しているログ分析システムの開発や、顧客ネットワークのセキュリティレベルの診断を行うための診断用ツールの開発などを行ってきました。いずれも、製品が出力するログデータを解析し、集約・フィルタリングなどを行うといったものや、OSや各種設定情報を取得して分析を行うといった、GUIとは切り離されたシステムの開発であり、全盲である私も多くの部分の開発を担当することができています。
もちろん、一般的なシステム開発に関する知識に加え、セキュリティに関する知識が必要となりますが、全盲であってもこの両方を持つことができれば差別化ポイントとなるでしょう。
審査員コメント
全盲の視覚障害者が情報処理技術を身につけ、資格を取得し、IT関連企業でシステム開発関連の経験を積まれています。多くのシステムはGUIが主要部分を占め、視覚障害者が入り込む余地は少なくなっていますが、システムが発生させるログの分析というテキストベースの分野を担当されているのが素晴らしいと感じました。 |
プロフィール
外谷 渉
システムエンジニア
生まれながらにして全盲。日本福祉大学情報社会科学部卒業後、情報セキュリティ分野に強みを持つIT関連企業に就職。自社開発のセキュリティ監視システムの開発に従事、新規事業の立ち上げにつながる新システムの研究・開発を実施。現在はデジタルフォレンジックに関する研究・開発を行う。