第16回「将来の夢や進路を考える集い」

1. 病気と治療研究について(高橋先生より)

  • 黄斑変性は網膜の中心が悪くなる病気で錐体ジストロフィーは黄斑変性の一種。
  • 加齢黄斑変性は中心部が悪くなるが周辺部は見えるので全盲にならない病気と言える。
  • 網膜の中心部の細胞は視力、周辺部の細胞は視野に関係する。
  • 来年以降に行う予定の加齢黄斑変性を対象とした臨床研究は視細胞ではなく、網膜色素上皮細胞の移植であり、視力が上がるとしてもほんの少し。数年かけて5人の患者に移植するが、最初は安全性の確認となる。
  • 錐体ジストロフィーは視細胞移植による治療が必要となる。7年後には1例目の臨床研究を行いたいと思っている。
  • 視力をあげるためには中心部に細胞を移植する必要があるが、中心部は視力を出すために大切な部位なので最初は周辺部に移植することになると思う。この場合、視力は上がらないが視野は広がる可能性がある。
  • 人工網膜は細胞移植よりも進んでいて、ドイツ・日本で研究されている。細胞移植と同じ効果を考えており、実際に行われた臨床研究では0.02の視力が出たと報告されている。次世代は0.1から0.2の視力が出るようになるのではないかと考えられるが、0.7まで上げようとすると細胞移植のほうがいいかもしれない。
  • iPS細胞のバンクができれば拒絶のないもしくは拒絶の少ない細胞を使った移植が可能になると考える。
  • 臨床試験の危険性について、眼は癌になりにくいと言われており、万が一癌になっても、眼底検査をすればわかるのでレーザー治療等が行え、早期治療が可能であると考える。また、マウスを使った動物実験でも危険性は少ないという結果が得られており、ど ちらかというと外科手術のほうが危険性が高いと言える。ただし、その危険性は一般的な白内障手術でも同じであり、手術そのものが100%安全ではなく、多少の危 険性を伴うものであるという意味である。
  • 臨床試験を行うにあたり、関係当局と話し合いを進めているが、患者会の力が必要である。ぜひ、患者会で治療研究に関する理解を深めてほしい。

2. 患者会について

  • JRPS(網膜色素変性症協会)はユースの会があり、対象は18歳から35歳。
  • 他に、若い人の視覚障害者ネットワーク「きららの会」がある。お料理やお出かけなどの催しがある。
    きららの会
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3. 子どもの進路、重複障害について

  • 子供の頃から目が悪い場合、目が悪いことによって問題(学習・行動障害や)が生じているのか、発達障害などその他の原因があるのかわかりにくい。
  • 見極めるためにはまず、目の問題を解決しないといけないので親による行動観察が重要。
  • 子供がいちばん何をやりたいか?今の学力は?という点を把握して、総合的に考え子供の進路を考えた時に盲学校も選択肢の一つになる。
  • どの教科を勉強するにも国語力が必要。国語を勉強するには「くもん」が効果的で段階ごとに勉強し、できることで達成感が得られるので楽しみながら学習できる。
  • まずは視覚的な問題をクリアすることが重要。
  • 発達障害がある場合、小さな子供に確定診断をつける必要があるのか?
    →現実を見て前を向けるようになるのであればいい。
  • 「障害」と言ってもいろいろあり、誰もが何らかの障害を持っていると言える。
    正常と障害の線引きが難しいものもあり、診断をつけるメリットは障害を理解し、自分の苦手な点を知り、その弱点と共存できることである。
  • 地元での子供の進路選択は4つあり、普通学級、通級教室、弱視学級、盲学校。
    ただし、地域によってはない場合もあり、子どもの特性に合わせて考えなくてはならない。
  • 幼稚園・小学校の間、子供は親の保護下で育つもの。その間は親が進路を選択するが、子供のことをいちばん知っているのは親だからその選択に間違いはない。
    そして、再度考える時が来たら、その時が進路変更のタイミング。その時からどうするかが問題であり、それまでのことは正しい選択であったはずなので心配ない。
  • そのときの親の直感を信じるのがよい。状況が変わったら、それはその時が、動きどき、変えどき、ということ。
  • 親は子供がいくつになっても心配で手助けしようとする傾向があるが、親は先に死ぬものと考え、できるだけ子供が自立できるようにすべき。
  • 子供は22歳までに勉強して学ぶべきことは学ぶ。親は学べる環境を子供に与え、子供にあらゆるチャンスと選択肢を与えてあげたらいい。
  • 子供は親のために生きているんじゃない。子供は親の壁の高さを知っている。その壁を乗り越えないと自分の人生を歩めない。

4. 点字について

  • 勉強する機会があるなら子供の頃から勉強したほうがいい。
  • 若い人、特に進行性の病気であれば、点字は学んでおくべき。必ず役に立つ。
  • 文字を読まないと頭に入らないと言う人は点字がいい。
  • 国家試験や資格試験も点字で対応しているので、勉強・受験のためにも必要。
    音声による試験はあまり普及していない。点字での入社試験なども増えている。
  • 点字だけでなく、合わせてパソコンの勉強も必須。最新情報は点字では得られない。
  • 歳を取ってからの点字の勉強は難しい。一般的に30歳前後の時期から難しくなる。仕事で使えるレベルに達するまで学習するのは難しい。そういう場合は、それまでの仕事で使っていたパソコンを使ったほうがよい。
  • 点字は券売機の金額やエレベーターの表示、点字名刺を読むのに役立つ。
  • 読書が好きな人は単に文字を読むだけでなく、行間を読みたいのでゆっくりでも点字で読む人がいる。点字は情緒を育てる。
  • 点字の独学は難しいので教えてくれるところを探して、きちんと習ったほうがいい。本当にやりたいと思う人は伸びる。
  • 0.2から0.3の視力であっても身体障害者手帳を持っていれば対応してもらえるので視力がある見えている間から勉強を始めるといい。

5. 就業について

  • 職業訓練は国立吉備高原職業訓練センターがおススメ。
    場所が通所には不便なところなので、入所したほうがよい。訓練を終えた後の就職率が高く、大手企業からの求人も多い。
    国立吉備高原職業リハビリ
    テーションセンター
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  • 環境を変えずに現在の仕事を続けたいなら道具が必要。道具があれば、できることが増える。
  • 一般的に女性は「35歳の壁」があり、障害者だけでなく晴眼者も求人が激減し就職・転職が難しくなる。
  • 自分の目がどれくらい使えているか評価を受けることにより、工夫が見つかる可能性がある。
    神戸視力障害センターで相談可能。センターは見学可能。電話予約可。
    神戸視力障害センター
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