上司や同僚の理解と協力で、困難な事務所移転を乗り越える。
15年間勤務した事務所が移転することになりました。私は生まれつきの弱視で、15年前には0.02あった視力が徐々に下がり、今はほとんど見えない状況なので、新しい事務所に安全に通勤するための歩行訓練を受けることにしました。ただ、移転までは1か月。歩行訓練は平日のみ。そこで部長に、歩行訓練を勤務時間中に受けたいと相談すると、「しっかりと安全確保を行ってください」と了解を得ることができました。通勤ルート確認の際には、同僚たちが地図で、点字ブロックが敷設され、人込みが少なそうなルートを調べ、現地確認にも同行してくれました。歩行訓練は無事、終了しました。移転の日が近づくと、「慣れるまでは駅で待ち合わせて一緒に行こう」と同僚が声をかけてくれました。とてもうれしかったのですが、丁重に断りました。早く慣れるには、まず自分で実践することが大事だから。移転後の初出勤日は不安でしたが、歩行訓練の成果もあり無事に出勤できました。
移転して1年。上司や同僚からの協力は今もあります。帰宅時に途中まで一緒に歩いてくれたり、道路工事による環境の変化を教えてくれたり。恵まれた職場の人間関係に感謝しています。
審査員コメント
同僚とのすばらしい人間関係があることに感銘を受けました。きっと、ご本人が真摯な態度で仕事に取り組み、できない仕事はどうすればできるようになるか、あるいは無理な理由もきちんと説明できているからに違いありません。また、仕事の一環として歩行訓練を許可した企業の姿勢も評価したいです。すべての企業で普通のことになってほしいと願います。 |
プロフィール
的場 孝至
会社員
先天性白内障と後発性緑内障を患う。1997年京都産業大学を卒業後、(株)ピープル(現・(株)コナミスポーツクラブ)に入社。営業部の事務職として、拡大読書器、拡大ソフト、音声ソフトなどを用いて、主にエクセルでのデータ処理を行っている。視覚障害者の就労を支援する認定NPO法人タートルの理事も務める。