
人生を丸ごと生かした「自分だからこそ」の働き方
私は、自分の経験を、多角的な働き方に繋げることに注力して歩んできました。
多くのご縁の中で、国内外での演奏や、筑波大学附属視覚特別支援学校の小学部や高等部音楽科等への指導に取り組んでいる和太鼓の演奏は、11歳の時に受けた、静岡県立沼津盲学校での授業が原点です。
一方で、同じく沼津盲学校時代の重度重複障害を有する友人たちとの出会いを機に関心を抱いた社会福祉を大学では学び、社会福祉士の資格を取得したうえで、専門知識と、障害当事者としての経験を合わせた講演や執筆にも力を入れてきました。
近年は、2011年に一年間在米していた時に学んだ、障害学の視点を盛り込み、演奏と共に、多様性や差別、人権についてお伝えする舞台も実施しています。2018年からは、社会福祉士としてのコミュニケーション技術を生かし、株式会社アオバヤ(宮城県仙台市)にて、社員の方々のメンタルヘルスのサポートにも携わっており、電話での相談業務やスピーチの配信などを行っています。
これらの仕事は全て、私に視覚障害があったからこそ巡り合うことができたものです。
障害も含め、持ちえたものを「自分だからこそ」の働き方に繋げることは、私の人生を豊かにしてくれるだけでなく、障害の有無を問わず、多くの人への強いメッセージにもなり得ると信じ活動しています。
審査員コメント
「多角的」という言葉を実践していらっしゃるのが素晴らしい。ある時は和太鼓奏者、ある時は視覚障害当事者、ある時は福祉の支援者、ある時は文章の表現者。人間とは本来多面体の存在。一つの肩書では説明できない。自分を構成するどんな要素も大切にしておられるその生き方と考え方に、強いシンパシーと共に輝きを感じました。「いったい何者ですか?」と尋ねられて、一言で説明できないのが人間なのです。 |
プロフィール
片岡 亮太
1984年生まれ。
生来弱視で、10歳の時の失明を機に転校した盲学校にて小学6年の頃より和太鼓の演奏を開始。
2007年、上智大学文学部社会福祉学科を首席卒業、併せて社会福祉士の資格を取。
同年から今日まで、国内外での演奏や指導、講演、執筆、メディア出演等、音楽と言葉を主軸に幅広い活動を重ねている。