【就労事例部門】MIP賞 白井 崇陽

全盲バイオリニストの演奏活動について

 デュオで演奏活動をしているバイオリニストボーカル白井崇陽さんをご紹介したい。
彼は全盲だが演奏も作曲もこなす。新曲を演奏する際は、自分で録音したデモ音源かPC制作ソフトで作った譜面をくれる。できることはすべて手間を惜しまず、わかる形で情報を伝えてくれる。私が演奏したい曲もデモ音源を送り、弾いてほしいラインを指定する。絶対音感はないそうだが相対音感があるので、最初の音を見出しそこから何度上か下か楽器を鳴らしながら探っていくようだ。暗譜の上でリハに入れ、アレンジの相談まで無駄がない。歌詞もリハ音源もブレイルメモを使い、その日のリハ音源をすぐ送ってくれるのも助かっている。ステージが広い時は足元にロープを貼りマイク前をT字にし動線と正面を把握している。クラシックに基盤のある演奏力、表現力、状況把握は見えるか見えないかとは関係がなく、枕詞のいらない素晴らしい演奏家だと思う。音楽とはややずれるが、彼は衣装を買う時と普段着を買う時とでは、お店への同行者を変えるという。晴眼者にとって視覚情報の影響力を理解しており、どう見られたいかを意識した上で、その都度環境や状況にあったおしゃれな服を(衣装なら華やかさを)(普段着なら今の流行を)選べる人を選んでいるというのは、幾重に重なって彼の面白みだと感じている。 (他薦)

審査員コメント

 バイオリンの卓越した技術や表現力があることに加え、様々なICTの活用、ステージ上にロープを張り付けるなどの独自の工夫、仲間とのつながりの中で自身のアピアランスを確立するブランディングの手法など、彼の生き方自体が1つのアートだと深い感銘を受けました。バイオリンやゲームなど、自分の好きなこと得意なことで人生を輝かせる彼の考え方にぜひ学ばせていただきたいと思いました。

プロフィール

白井 崇陽
バイオリニスト。情感豊かに心を包み込む暖かい音色は歌そのもの。
オリジナルアルバム「空と大地のノスタルジア」では、歌唱にも挑戦。全国各地での演奏の他、学校での講演(トーク&ライブ)・舞台音楽への参加・アニメやゲーム音楽のレコーディング・ラジオパーソナリティ・囲碁など幅広く活動中。
ゲームアクセシビリティ研究チームIGLインビジブル・ゲーミングラボ代表。

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