障害を強みに変えて独立開業。ICTの力で生活と就労を支援します。
生まれつき両手の機能障害と弱視があります。障害者の役に立てる仕事に就きたいと思い、関西学院大学の社会福祉学科に進学。身体障害者入所施設でパソコン活用を補助するボランティアも行いました。医療機器メーカーにシステムエンジニアとして就職しましたが、障害が悪化し、独立開業を決意しました。2014年に障害者向けの訪問パソコン講座の事業を開始。パソコンの設定を変更したり、スマートフォンなどのタッチ操作を補助する自助具を紹介したりと幅広い対応が必要ななか、視覚障害者用ICT機器に関する知識や、複数の障害を持つ自身の経験が役立っています。個人宅に訪問する際はスマートフォンのGPSセンサや地図アプリなどを駆使することで、弱視者には難しいとされていた顧客訪問や営業活動を実現しています。
現在は障害者の入所施設などでもサポートを提供しつつ、兵庫県視覚障害者福祉協会で、県下の視覚障害者から寄せられるICT機器に関する相談や修理を担当。ICTシステムの導入支援や、視覚障害者のための情報提供アプリの開発にも携わっています。今後は、視覚障害者がICTの知識や技術を活用して就労の幅を広げるための講習会を開催したいと考えています。
審査員コメント
近年、盲学校では視覚障害と他の障害を併せた重複障害の生徒が増えており、ほとんどが福祉事業所に進んでいるのが実情です。岸本さんは視覚、上肢ともに重度障害であるにも関わらず、高い志を持ち、自身の特性を認識し、必要なスキルを磨きながら就労されています。就労を希望する重複障害の人たちに大きな勇気を与えてくれるでしょう。 |
プロフィール
岸本 将志
自営業(講師業) 福祉情報コーディネーター
先天性の両上肢機能障害と弱視を持って出生。2002年関西学院大学社会学部に入学。身体障害者入所施設でパソコン教室のボランティアを行う。09年大阪電気通信大学大学院医療福祉工学研究科修了、医療機器メーカーに入社。11年に独立開業し、16年に兵庫県視覚障害者福祉協会のICTサポートを担当。