【就労事例部門】METP賞①杭迫 真奈美

かつて追い求めた光を失ってもくじけない。
Excelと読み上げソフトで新たな仕事を創出。

 私の仕事は特殊な光学設計ソフトでレンズを研究開発する専門職でした。光や色を追求してきた私の眼がそれらを失ってしまったのは運命のいたずらでしょうか。網膜色素変性症が進行して5年前には視覚障害1級に認定され、今は盲導犬の助けを借りて往復三時間の道のりを通勤しています。
 見えなくなってからも光学設計ソフトに対応する複数の読み上げソフトを駆使しながら、年1?2件の特許を取得し続けることができたのは聴覚情報を通して脳内に新機軸をイメージ化することができたからでした。しかし、2017年にWindows10が導入されると、光学設計ソフトに対応する読み上げソフトは皆無になってしまいました。長年打ち込んできた専門分野とのバイパスが途切れてしまったことは、まさに手足をもがれる思いでしたが、私は読み上げに対応する汎用ソフトを使ってできる新たな仕事を必死で探し始めました。試行錯誤を経て最後に「これだ」と思ったのはデータサイエンスの仕事でした。ビッグデータを扱うだけがデータサイエンスではない。むしろ会社で日常的に扱うデータ量はExcelなど汎用ソフトで十分に扱える大きさなのです。会社のバックアップも得ながら私はいま、無色の(ただの数字)情報を、色つきの(役に立つ)情報に変える仕事をしています。

審査員コメント

 専門のレンズ設計の仕事だけでなく、ご自分で会社の業務を見渡して、Excelを使った統計処理の仕事を確立していかれていることは素晴らしいことだと思います。
 視覚障害者でもどんな仕事ができるか、どうすればできるかを自ら探求し実践し続けていらっしゃる杭迫さんの姿勢にとても感銘を受けました。パイオニアとしての杭迫さんの活躍を応援しています!

プロフィール

 

杭迫 真奈美
会社員

奈良女子大学理学部物理学科卒。ミノルタ株式会社入社。社内研究者としてレンズ設計に従事。取得特許は約30件。日本光学会で光設計特別賞や奨励賞を受賞。現在はコニカミノルタ株式会社開発統括本部に勤務。

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