視覚障害者のトリセツ(取扱説明書)
-伝える前に伝わるようにするための工夫-
私が働いている会社は「おおよそ3年で人事異動」が通例となっています。つまり毎年、3分の1の人が入れ替わり、3年目には自分が新しい環境で働く事となるわけです。見た目で視覚に障害があるとわかるわけもないため人が入れ替わる度に自らの障害をアピールし理解を促すことが恒例行事となりそれ自体が大きな負担となっていました。
そういった事情を上司に相談したところ「視覚障害の内容や配慮してほしいことをまとめたものを作っておくのはどうだろう」とアドバイスを貰いその上司の協力を得ながら「自身の取扱説明書」を作成しました。資料の中身は「そもそも視覚障害とはどのようなものか」といった概要を示したうえで「視野欠損や夜盲」のイメージイラストや「日常や業務上のやりとりで注意・配慮が必要なポイント」をまとめたものとなります。
作った資料については、職場の管理者に展開し、管理者は各々の部下に周知をしてもらうようお願いしました。
結果、自分の人事異動や周囲のメンバーの異動のたびに「1から説明する」という場面が減り「障害についてしってもらう」ことの負担が減る事となりました。
審査員コメント
「視覚障害者の取説」という一見シンプルなアイデアですが、これには大きな意義を感じます。視覚障害者自身が、会社に対し、できないことや必要なことを伝えていくのはかなりの負担となることが少なくないので、これは、視覚障害者を雇用するすべての企業で実践してほしい工夫だと感じます。 自身の取り扱い説明書を作るというのはとても面白く実用的。「わかってもらえないのがつらい」と嘆く患者さんが多い心の医療でも役立ちそうな手法です。 |
プロフィール
清野 貴至
会社員
大阪府出身。高校時代に網膜色素変性症による視野障害で障害者手帳2級を交付される。
当時通っていた高校から大阪市立盲学校(現在の大阪北視覚支援学校)に編入。
その後、大学へ進学しNTT西日本に入社。現在は矯正視力0.1程度で岩度の視野狭窄の状態。