【就労事例部門】MEP賞①吉村 文雄

社長業は視覚障害者の適職のひとつです。
そうなるよう五感コミ力IT力を高めます。

 朝8時、食堂に集まる社員。これから朝礼が始まります。挨拶の後、一人ずつ昨日の仕事の内容を形容を交えて報告します。私はその内容を静かに聞き入り形容を交えて返します。想像を頭に現場で社員と一緒に現物の確認をします。素手であられを触り耳で音を聞き、匂いを嗅ぎ舌で味を確かめる。この時も形容にて会話を深めます。これが大事。社長と社員の頭の中を繋ぐ糸となるのです。
 3年前、私の障害と並行に退職を申し出る社員が続き、社長を退こうと習った音声パソコンや点字が身に付くに連れ『障害によって出来なくなることを後追いするより、新たに出来ていく自分に自信を持とう』と自分流の社長業を貫くことを決意しました。正午、点字で読書をはじめます。小説を読むことで表現力が高まりコミ力アップにもつながります。初めての方との商談では障害のことを打明けます。会話と太マジックとスマホの音声メモを録音して商談します。経営資料は勘定電子データをエクセルで取り出し音声で読み込ませ管理します。
 目が見にくくなればやり方を変えればいい。会話の仕方も変えればいい。変えてならないのは『能力を磨くこと』。目が見にくくとも残された感覚を研ぎ澄まし、自分流のやり方をつくり磨きながらこれからも二つの老舗会社の社長として走り続けていきます。

審査員コメント

 大げさじゃなくても奇跡の出会いがなくても大丈夫。今まで通り仕事を続けるためには、ほんの少しやり方を変えるだけでいいんだ。「やり方をかえていくということは、生きていくこと」という言葉に穏やかながら強い意志を感じました。やり方をかえるのは実際には簡単でありませんが、お仕事に対する責任感ややりがい、社員の方やご家族との相互の信頼がその思いを支えているのだと思います。

プロフィール

 

吉村 文雄
会社役員

1966年福井県鯖江市生まれ。米菓製造会社社長。緑内障による視野狭窄により1種2級の中途障害。
2016年福井県視覚障害者センターにて点字を受講。
2017年東京四谷盲人職能開発センターにて音声パソコンの基礎コースを受講。
いずれのツールも現在の私にとってなくてはならないものです。

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