視覚障害者による、視覚障害者のためのラジオ番組の制作。

 視覚障害者にとって、言葉と音だけで伝えようとするラジオは貴重な情報源です。視覚障害者を意識した構成の番組も数多くあります。また、最近のテレビやラジオでは、障害者の活躍や暮らしぶりを取り上げた番組も多く制作され、東京パラリンピック開催に向けて取材される障害者やアスリートも増えてきています。
 けれども、そのほとんどは晴眼者が制作し、晴眼者の視点で発信しているように感じます。そこで提案したいのは、視覚障害者が企画段階から携わり、自分たちが知りたい情報や取り上げたい人物、聴きたい音楽などを構成して、発信するラジオ番組の制作です。
 もちろん、当日の機器のオペレーションなどは晴眼者の力を借りることになりますが、自分たちでできることは自分たちで行って、わからないことはわからないなりに自分たちで調べて制作するというかたちを取ります。
 視覚障害者の視覚障害者による視覚障害者のための1時間枠の特番。まずは、制作意欲のあるロービジョンの障害者をラジオ番組で公募し、制作スタッフになっていただくことから始めましょう。ラジオ番組のスタッフの一員になることによって、視覚障害者が情報の受け手だけでなく、発信者となれるチャンスを生むことにもなるはずです。

審査員コメント

視覚障害者は“情報障害者”と言われることがありますが、それを克服する一つの方法は、視覚障害者自身が情報の受け手に留まるのではなく、送り手の側に参画すること。また、視覚障害者の音に対する繊細な感性が、一昔前のメディアととらえられがちなラジオに新しい可能性をもたらすことも期待できます。

プロフィール

 

吉田 明美
構成作家

CAMEYO所属。日本脚本家連盟会員。日本網膜色素変性症協会(JRPS)で事務を担当。一度も視覚障害者と接したことがないまま、30歳で東京都の福祉ラジオ番組を担当。視覚障害者をレポーターに起用し、彼らの前向きな生き方に大いに刺激を受ける。

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