テーマ
- 遺伝に関する漠然とした不安を解消
- 遺伝子について知ることのデメリット・リスクは?
1. 遺伝と遺伝子の区別
- 遺伝する遺伝子と遺伝しない遺伝子
- 生殖細胞系列は次世代に設計図が伝わる。
- 体細胞系列は自分の体の中で細胞分裂しコピーされる。
- 「Genetics」と言う言葉は遺伝子が原因であることを意味し、「Inheritance, Hereditary」と言う言葉は世代を超えて伝わる遺伝性を意味する。
(遺伝子が原因であるという事と、世代を超えて遺伝するという事は同じではない。英語では言葉が違うので区別しやすいが、日本語はどちらも「遺伝」と言う言葉が使われ混同され、誤解されやすい)
- 多因子遺伝と体質と病気
遺伝子は体の設計図。百科事典に例えると……
染色体は1巻、2巻、3巻。
遺伝子は1文、1文の意味のあるまとまり。
DNAは1文字、1文字で意味をなさない。
2. 遺伝情報の特殊性〜なぜカウンセリングが必要か
- 遺伝情報は一生変わらない、情報を変えたり知らない状態には戻せない。
- 自分だけの情報ではない、家族で共有するものである。
- 将来の予測ができたり、全てがわかるわけではない。いつどうなるか、100%病気になるかはわからない。
→遺伝子検査を受ける前に、遺伝情報が自分や自分の家族にとってどういう意味を持ち得るかを知り、考えた上で検討することが重要。 - それらの相談をしたり正しく理解するための情報を得たりできる場所が遺伝カウンセリング。
3. 遺伝子の変化
- 誰もがもっている。
- 顔・体など日常生活に問題ないものもあるが病気に関連するものもある。
- 病気に関連する遺伝子の中でも重い病気になるもの、ならないものがある。
- 機械や道具をうまく活用すれば視力がゼロになっても活躍できる。見えないからこそできることもある!
- 100%遺伝子の影響、単一遺伝子の病気はごく一部。
4. 遺伝と環境要因
- 多因子遺伝と言われるものは身長、高血圧、糖尿病、近視、遠視、乱視、目の形(眼軸の長さ)など。
- 色覚特性を持つのは男性20人に1人。
- 先天性の白内障で遺伝性と言われるのは20〜30%。
- 家族性緑内障。
- 網膜色素変性は多くの原因遺伝子がある単一遺伝性疾患。
5. 網膜色素変性外来(先端医療センター病院眼科)の遺伝カウンセリング
- 初診時に遺伝カウンセリングがもれなくついてくる。
- カウンセリング内容は遺伝に関わること、結婚・出産、子供世代・孫世代、病気に対する思い、見えにくさや進行具合とどう付き合うか、日常生活の困難さ、進路・仕事、周囲との関係など様々。
- 遺伝は身近な事柄。カウンセリングは医療に限らず、その人に必要な情報につながる。
- 疾患についてだけでなく、家族や人生について、苦悩とのつき合い方を話す。必要なときは心理カウンセラーとも連携することもある。
- 治ることへ過度な期待をするのではなく、見えにくい時期をどう過ごすか、その見え方とどうつき合っていくかを考えることが大切。
- 遺伝カウンセラーの立場としては遺伝カウンセリングの存在を知ってもらい、医療と患者・家族の間の橋渡し役になりたい。
- 自分を主体的に考えるための場所。
- 心理的サポート・社会的サポートは遺伝カウンセリングと切り離せないもの。
- 人生の様々なステージでの遺伝に関する悩み事を普段話せるところはなかなかないが、遺伝カウンセリングを話せる場所、相談できる場所として利用してもらうとよい。
- 家族のことを詳しく聴く中で遺伝形式を予測できる場合もある。
- 遺伝子診断と眼科的臨床診断を組み合わせて確定診断できることもある。
- 遺伝情報を中途半端に知ると身内でもあっても(身内だからこそ)それぞれの立場により受け止め方が違ったり、複雑な理解となり、不要な心配や過度な不安に結びつくこともある。個々にとっての意味付けや影響を正しく理解する機会として遺伝カウンセリングを利用できる。
- 人に聞かれた時にきちんと答えられるように知識を得ておきたいという人もいる。
6. 研究について
- 原因遺伝子は同じような変化があった時に傾向がわかる。
- 遺伝子検査を行っても原因遺伝子は見つからない場合が約7割程度。または3割程度で何らかの遺伝子の変化が見つかったとしても、必ずしも原因遺伝子の特定にならない場合もある(遺伝子検査自体が研究中の段階の検査)。
- いくつかの特定の原因遺伝子に対して、海外では遺伝子治療研究を行っているケースもある。
7. 遺伝や見え方に関する感想や思い(患者さん・家族さんより)
- 将来はどうなるんだろう、何ができるのだろうと不安が大きかった。未来図が描けないのが不安だった。
- 診察では視野や視力を測定するが、色が白黒になったり、湯けむりの中にいるように見えたり、見え方は人それぞれ違い、検査結果と自覚症状は全く同じというわけではない。
- 平均寿命が延びたこともあり、長生きしてさらに見えにくさを感じるようになったかもしれない。
- 同じ病気でも進行の度合いは個人差がある。
- 見えていること、見えていないことを人に伝えて理解してもらうことは難しい。
- 見えなくなることを嘆くのではなく、見えていることは見えないよりも幸せなことなのだから、見えている今を楽しんでほしい。
- まず自分で体験して認めることが大切。
- 現実に向かって挑戦し、マイナスをプラスに変える勇気を持ってほしい。
- 親として目の見えない子供を産んでしまったと悩み、事実を受容できない時期があった。子供が一人で生きていけるように厳しく育てたことで子供は親に愛されていないのではないかと感じた時期があったようだ。
その後、患者会で元気な視覚障害者に出会い、いろいろ話すことで親として子供の病気を受容でき、子供もその親の姿を見て考えが変わったようだ。 - 親同士、子供同士のつながりも大切。話をするだけでもOK。
- 自分を認める勇気を持つことが大切。
8. 生活の工夫や趣味について(患者さん・家族さんより)
- 遺伝性疾患のため、少しずつ見えにくくなることがわかっている。だからこそ、見えにくくなった時の準備をしている。
- 見えている間にやりたいと思うことをやっている。
- 見えにくくなってからのスポーツはガイドの指示をよく聞くようになって成績があがったという話を聞いた。
- 視覚障害者のスポーツはゴルフ、テニス、サッカー、ヨット、バドミントン、マラソンなど様々。
- 街中で人や物にぶつかることが多かったが、白杖を持つようになってぶつからなくなった。
- 日常生活訓練(歩行訓練)を行うことは、訓練そのものが心の支えになる。
- 障害者として特別扱いされることが嫌なこともあるが娯楽施設では障害者は列に並ばなくても、待たなくても入れるシステムがあり、それもラッキーだと思うようになった。
- 盲導犬と一緒だといいことが多い。声をかけてもらいやすい。
- 障害者になって8〜9割の人は協力的で助けてくれると感じる。