
PC操作時における補助機器としてのMIDIコントローラーの利用
私はドイツでソフトウェア開発をしている自営業者です。プログラミングの際に画面上のものを認識するのにしばしば問題が生じます。通常、エディタやIDEではGUIを自分に合った環境(書式、色、コントラスト等)に設定できるので殆ど問題はありませんが、その他のソフトウェアにおいては大抵の場合、困難であるか、ほぼ不可能であることが多いです。
ある日、趣味のシンセサイザーを操作していた時、MIDIコントローラーを使って画面上のグラフィックの表示を調節することを思いつきました。そのようなコントローラーはUSBでどんなコンピューターにも繋ぐことができ、そこまで費用もかかりません。MIDIコントローラーには様々なものがあり、たくさんの押しボタン、スライドツマミや回転ツマミ等がついています。それらにどの役割を持たせるかをMIDIインターフェースで自由にプログラミングできます。
例えば私自身はMIDIコントローラーのボタン操作で画面のコントラスト、ガンマ値、色彩の調整、色の反転をするソフトウェアを作りました。キーボードショートカットに代わり、物理的な回転ツマミで画面表示を調節できるようになり、作業がずっと楽になりました。
パソコンの再起動や余計な設定、構成の手間もなく、繋いで直ぐに使うことができます。
審査員コメント
視覚障害者のPC操作の補助機器としてMIDIコントローラーを使うという、まだ誰も気づいていなかった手法を発見し、実際に便利に活用している応募者の発送の豊かさとそれを支える技術力に深い感銘を受けました。本事例は、視覚障害者の専用機でなくとも、既存のMIDIコントローラーを活用すれば、多くの視覚障害者がPCやスマホをより便利にしかも安価で活用できるようになるのだという、実現可能で極めて有用な示唆を与えてくれます。 |
プロフィール
鈴木 モーリッツ
2001年ベルリンの電気回路設計の会社に入社。ソフトウェア、ハードウェアのプログラミングに携わる。
2004年にソフトウェア開発者として独立。
2009年に見えづらさに気づき始め、2012年に網膜色素変性症と診断される。