クラウドシステムの、
インフラ管理業務に挑戦。
従来、視覚障害者(とくに私のような全盲)の場合、大規模なシステムのインフラ管理業務を行うことは、各種機器の配置や配線・各機器の設定を個別に行う必要があり、現実的には困難でした。これに対して、利用が広まってきているクラウド上のシステムであれば、視覚障害者にもインフラ管理という業務が可能になると考えています。
まず、クラウド上のシステムでは、配置や配線という物理的な作業は一切不要です。ウェブ画面上の操作やAPIを使うことによって必要な機器の追加も可能。個別機器の設定についても、従来は機器ごとに設定画面にアクセスするなどの方法で個別に行う必要があり、この作業がスクリーンリーダーに対応しないために視覚障害者が独力で行えないケースも存在しましたが、クラウドであれば、共通のウェブ画面上の操作によって、共通的な操作で必要な設定の実行が可能になります。
今、社内で管理していた各種システムをクラウド上に移行する会社が増えています。メンテナンスコストや利便性などからさらにこの傾向は進むと考えられます。視覚障害者側としては、クラウドサービス上でのインフラ管理について知識を深めておくことで、業務として参入することが難しかったインフラ管理という分野に、新たな業務領域として挑戦するチャンスが得られるのではないかと思っています。
審査員コメント
クラウド上でのデータ管理が普及することで、これまで視覚障害者には困難だったシステムインフラ管理業務への道が開けたという発想が秀逸です。たしかにこの分野では、腕と知識があれば視覚障害者も健常者と対等に渡り合える可能性があると思われるので、このアイデアには大きな将来性を感じました。 |
プロフィール
外谷 渉
システムエンジニア
生まれながらにして全盲。日本福祉大学情報社会科学部卒業後、情報セキュリティ分野に強みを持つIT関連企業に就職。自社開発のセキュリティ監視システムの開発に従事、新規事業の立ち上げにつながる新システムの研究・開発を実施。現在はデジタルフォレンジックに関する研究・開発を行う。