表紙 活動報告書 2023-2024 公益社団法人 NEXT VISION i see!運動 障害者のホントを見よう この冊子はウェブサイトにPDFファイルを公開しています。音声で聞いていただけますので下記よりご確認ください。 二次元コードはこちらです。 二次元コードのURL https://nextvision.or.jp/document/reports/R5_katudouhoukoku.pdf 1ページ NEXT VISIONへのご支援をありがとうございます。 みなさまのご支援・ご協力に支えられ、活動を継続することができます。 これからもよろしくお願いいたします。 (五十音順・敬称略)2024年9月30日現在 賛助会員 青木 勢津子 ( アオキ セツコ ) 赤井 愛 ( アカイ アイ ) 石川 典子 ( イシカワ ノリコ ) 石子 智士 ( イシコ サトシ ) 石塚 隆之 ( イシヅカ タカユキ ) 市川 照芳 ( イチカワ テルヨシ ) 出原 恵美子 ( イデハラ エミコ ) 伊藤 幸太郎 ( イトウ コウタロウ ) 伊藤 節代 ( イトウ セツヨ ) 伊藤 政文 ( イトウ マサフミ ) 井上 直樹 ( イノウエ ナオキ ) 井本 学明 ( イモト ガクミョウ ) 井本 清江 ( イモト キヨエ ) 上竹 あゆみ ( ウエタケ アユミ ) 上野 盛夫 ( ウエノ モリオ ) 遠藤 洋之 ( エンドウ ヒロユキ ) 大蔵 克己 ( オオクラ カツミ ) 岡田 太丞 ( オカダ タイスケ ) 岡部 宏彦 ( オカベ ヒロヒコ ) 金井 国利 ( カナイ クニトシ ) 加納 猛彦 ( カノウ タケヒコ ) 川上 兼弘 ( カワカミ カネヒロ ) 川真田 伸 ( カワマタ シン ) 神田 信 ( カンダ シン ) 木村 郁夫 ( キムラ イクオ ) 熊懐 敬 ( クマダキ ケイ ) 越川 慎一 ( コシカワ シンイチ ) 小寺 佑花 ( コデラ ユカ ) 小山 健一 ( コヤマ ケンイチ ) 小山 哲矢 ( コヤマ テツヤ ) 齋藤 裕美 ( サイトウ ヒロミ ) 佐渡 一成 ( サド カズシゲ ) 清水 久美 ( シミズ クミ ) 杉田 啓之 ( スギタ ヒロユキ ) 園 順一 ( ソノ ジュンイチ ) 高田 忍 ( タカダ シノブ ) 竹田 武夫 ( タケダ タケオ ) 田中 桂子 ( タナカ ケイコ ) 田中 幸二 ( タナカ コウジ ) 津田 孝司 ( ツダ タカシ ) 手良西 萬里子 ( テラニシ マリコ ) 土佐 美佳 ( トサ ミカ ) 富田 喜一郎 ( トミタ キイチロウ ) 中尾 郁子 ( ナカオ イクコ ) 長岡 保 ( ナガオカ タモツ ) 中川 倫子 ( ナカガワ ミチコ ) 西村 眞理子 ( ニシムラ マリコ ) 野瀬 昌幸 ( ノセ マサユキ ) 八田 美智代 ( ハッタ ミチヨ ) 東尾 和司 ( ヒガシオ カズシ ) 人見 智子 ( ヒトミ サトコ ) 日比野 かおり ( ヒビノ カオリ ) 平井 啓一 ( ヒライ ケイイチ ) 福田 麻美 ( フクダ アサミ ) 藤原 守雄 ( フジワラ モリオ ) 干谷 貴之 ( ホシタニ タカユキ ) 前川 喜美恵 ( マエカワ キミエ ) 前川 清 ( マエカワ キヨシ ) 松浦 常子 ( マツウラ ツネコ ) 松村 美代 ( マツムラ ミヨ ) 丸山 亜実 ( マルヤマ アミ ) 三宅 るみ子 ( ミヤケ ルミコ ) 村井 薫 ( ムライ カオル ) 村瀬 友救 ( ムラセ トモヤス ) 安井 利恵子 ( ヤスイ リエコ ) 山下 秀明 ( ヤマシタ ヒデアキ ) 山田 久美 ( ヤマダ ヒサミ ) 吉野 豪 ( ヨシノ ゴウ ) 吉野 由美子 ( ヨシノ ユミコ ) 吉本 領 ( ヨシモト オサム ) エクスポート・ジャパン株式会社 ( エクスポートジャパンカブシキガイシャ ) 大崎工業株式会社 ( オオサキコウギョウカブシキガイシャ ) 株式会社 Raise the Flag. ( カブシキガイシャ レイズ ザ フラッグ ) 株式会社 Ashirase ( カブシキガイシャアシラセ ) 株式会社ASTO System ( カブシキガイシャアストシステム ) 株式会社神戸ポートピアホテル ( カブシキガイシャコウベポートピアホテル ) 株式会社システムギアビジョン ( カブシキガイシャシステムギアビジョン ) 株式会社プライムアシスタンス ( カブシキガイシャプライムアシスタンス ) 公益社団法人日本網膜色素変性症協会 ( コウエキシャダンホウジンニホンモウマクシキソヘンセイショウキョウカイ ) ダイダン株式会社 ( ダイダンカブシキガイシャ ) ノバルティスファーマ株式会社 ( ノバルティスファーマカブシキガイシャ ) Vixion株式会社 ( ヴィクシオンカブシキガイシャ ) PLAYWORKS株式会社 ( プレイワークスカブシキガイシャ ) 有限会社ダイユー/DAIYU LIGHTING ( ユウゲンガイシャダイユー/ダイユーライティング ) 有限会社テイクス ( ユウゲンガイシャテイクス ) 和研薬株式会社 ( ワケンヤクカブシキガイシャ ) 寄付 浅田 一憲 ( アサダ カズノリ ) 飯野 初生 ( イイノ ハツオ ) 川端 輝彦 ( カワバタ テルヒコ ) 栗和田 榮一 ( クリワダ エイイチ ) 髙橋 淳 ( タカハシ ジュン ) 中井 正憲 ( ナカイ マサノリ ) 平見 恭彦 ( ヒラミ ヤスヒコ ) 藤原 文隆 ( フジワラ フミタカ ) 藤原 りつ子 ( フジワラ リツコ ) 干谷 貴之 ( ホシタニ タカユキ ) 前川 喜美恵 ( マエカワ キミエ ) 万代 道子 ( マンダイ ミチコ ) 若宮 正子 ( ワカミヤ マサコ ) 一般社団法人 チャレンジド・ヨガ ( イッパンシャダンホウジン チャレンジド・ヨガ ) クラシカ ( カイインセイサロン クラシカ ) 國松昭子基金 ( クニマツアキコキキン ) ショパニストアーツ ( ショパニストアーツ ) 住友ファーマ株式会社 ( スミトモファーマカブシキガイシャ ) ソニー株式会社 ( ソニーカブシキガイシャ ) 谷眼科医院 谷恵美子 ( タニガンカイイン タニエミコ ) 名古屋アイクリニック 医)REC ( ナゴヤアイクリニック イ)アールイーシー ) ハルズベーカリー ( ハルズベーカリー ) ラジオ大阪 ラジオ チャリティ・ミュージックソン ( ラジオオオサカ ラジオ チャリティ・ミュージックソン ) パートナー Platinum シスメックス株式会社 ( シスメックスカブシキガイシャ ) Gold 株式会社 Raise the Flag. ( カブシキガイシャ レイズ ザ フラッグ ) Gold 中外製薬株式会社 ( チュウガイセイヤクカブシキガイシャ ) Bronze 参天製薬株式会社 ( サンテンセイヤクカブシキガイシャ ) 助成 日本財団 ( ニッポンザイダン ) 4ページ 代表理事ごあいさつ 公益社団法人NEXT VISION 代表理事 仲泊 聡 本年度も多大なるご寄付(ふるさと納税を含む)、賛助会員の皆様からの会費、並びに企業パートナー様からのご協賛を賜り、心より感謝申し上げます。 皆様の温かいご支援により、NEXT VISIONの活動をより一層充実させることができました。 私たちの事業目的は、すべての視覚障害者の福祉向上と科学技術の発展に寄与することです。 そのために、視覚障害者の日常生活、就労などの社会参加活動等に対する様々な支援、機能向上・回復のためのリハビリテーションを含む技術開発、さらに眼科領域における調査・研究を私たちは行ってまいりました。今回頂いたご支援はこれらの活動に大切に活用させていただきました。 眼科医療における視覚障害者支援サービスは、ロービジョンケアとして徐々に普及しており、その必要性が広く認識されるようになっています。 しかし、学会や政府への働きかけには、さらにその重要性を裏付けるデータが求められるため、私たちはその信頼性の高いデータ収集を最重要課題としています。 そのためここ数年は、ビジョンパークでの諸活動に加え、東北大学の大規模研究「COI-NEXT」に参画し、立命館大学とも共同で視覚障害関連の研究事業を進めて参りました。 さて、昨年特に注目を集めたのは生成AIの広範な応用だったのではないでしょうか。 私たちも早期からこれに着目し、株式会社ビジョンケアと協力してロービジョン相談のAI化に取り組み始めました。 生成AIは多言語対応が容易で、世界的展開が期待できる一方で、視覚障害者支援というものは地域性と多様性が著しく、一般的なアプローチが難しい分野でもあり、この分野への応用は容易ではありません。 私たちは、このような困難な事業にも積極的に取り組み、すべての人々が、安心安全にそして楽しく過ごすことができる社会の実現を目指し、引き続き尽力してまいります。 今後とも変わらぬご支援ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。 5ページ 公益社団法人NEXT VISION 令和5年度事業報告書 (令和5年4月1日~令和6年3月31日) I.実施事業 1.視覚障害者に対する直接支援事業(公益目的事業①) (1)当事者向け講座、セミナー事業  遠隔で当事者、家族、支援者への情報提供を行い、地域性による情報格差を軽減し、全国の情報障害者を減らします。 1)ビジョンパークチャンネル 登録者数:942人、公開コンテンツ:205本 デジタルラウンジ、G-1グランプリ、ロービジョンの集いなどのイベントをオンラインで開催し、動画および音声をビジョンパークチャンネルに公開しました。 https://www.youtube.com/@nextvision3230 (総評) コロナ禍以降はビジョンパークで実施していたイベントをZoomを使ったオンライン開催に変更したことで参加者が増加、リアルタイムに参加できない方がいつでも視聴できるよう、ビジョンパークチャンネルでアーカイブ動画を公開したことでさらに多くの方に情報をお届けすることができました。 居住する地域を問わない情報処方を行うことができ、お一人お一人のニーズに合った情報提供及びテクノロジー支援を行いました。 参加者は視覚障害者だけでなく、支援者やご家族も含まれていたことから、今後は医療従事者や教育・福祉関係者、開発者等も含めてより多くの方に、情報提供およびロービジョンケアに関する理解を広めるために、得られた運営・開催方法に関する知見を活かして本事業を継続したいと考えます。 2)研修 ●デジタルラウンジ 開催日・テーマ又はゲスト名・オンライン参加人数・内容 2023/4/24・ゲスト:西本 卓也さん 参加者:91人 ゲストに無料のスクリーンリーダー「NVDA」の開発をしていただいているプログラマーの西本 卓也さんをお迎えしました。 昨年まで10年間、NVDA日本語チームの代表として日本語対応と普及に取り組まれてこられた取り組みや最近話題のChatGPTと音声ユーザーのアクセスとの共通点のお話や視覚障害者のアクセシビリティと今後の展望など興味深いお話をお聞きできました。 2023/5/22・ロービジョンケアにおけるiPhone・iPadの活用/歩行支援アプリ「アイナビ」の紹介・参加者:112人 デジタルロービジョンケアとして、iPhone・iPadの基本的な便利な活用法を三宅 琢が改めてご紹介しました。 また、アプリ紹介として、4月に公開された視覚障害者向けの歩行支援アプリ「アイナビ」の使用感をわきちが紹介しました。 2023/6/26・iPhoneの文字入力の基本その1・参加者:88人 iPhoneの基本操作講習として井上 直也さんによるiPhoneの文字入力の基本その1です。 スマホの文字入力が苦手と言う方も多くいらっしゃいます。そこで、文字入力について基本を学びました。後半は、最近話題のChatGPTの活用について紹介しました。 2023/7/24・ゲスト:切明 政憲さん・参加者:84人 ゲストとして全盲のシステムエンジニアとして活躍されている切明 政憲(きりあけ まさのり)さんをお迎えしました。 幼少期から盲学校で学び、コンピューターのプログラミングに興味を持ち、システムエンジニアとして活躍されるまでの経緯を視覚障害者のIT機器の歴史と共に語っていただきました。 スクリーンリーダーの日本語化の開発として、outSPOKENプロジェクトやJAWS日本語版の開発のお話しやGoogleのアクセシビリティ向上に関わられたことなど興味深いお話が聞けました。 また、未来に向けて見えない子どもたちがプログラミングを学べるようにする環境を整えたいと思いも語っていただきました。 2023/8/28・ゲスト:御園 政光さん・参加者:108人 2021年2月にスペシャルゲストとしてお迎えした御園 政光さんを再びお迎えし、視覚障害者の移動支援をテーマにトークを展開しました。 今年4月に視覚障害者向けのアプリとして「アイナビ」が発表され、また、「あしらせ」の登場など新しい移動支援のアプリや機器が利用できるようになりました。また、来年にはAppleから眼鏡型デバイスVision Plusも発表されます。 そこで、今回は今後の視覚障害者向けのナビゲーションシステムや移動支援の可能性について考えました。 2023/9/25・Appleの新製品の特徴と展望・参加者:135人 9月、Appleの新製品が発表され、iPhone 15シリーズで4種類、Apple Watchで2種類の新モデルが発表されました。 これらの製品の特長、新しくなった部分を紹介しました。 そして、展望としてロービジョンユーザーの活用の可能性について、来年発売されると発表されているApple Vision Proへの期待などを話しました。 また、iOS17のこと、iPhoneの機種選びの考え方や参加者からの意見や質問を受け付けました。 2023/10/23・iPhoneの文字入力の基本その2・参加者:76人 井上 直也さんによる「文字入力の基本その2」と題してiPhoneの文字入力の基本を説明しました。 Qwertyのアルファベット配列、日本語かな配列の文字入力を確実に行う方法で、ゆっくりでも正確に文字入力ができる基本です。 2023/11/24・ゲスト:常 瑠里子さん・参加者:113人 ゲストとしてフリーランスで、オンラインによる英会話レッスン、企業研修の講師などとして活躍されている全盲の常 瑠里子さんをお迎えしました。 2歳半の時に失明し、小・中学校を盲学校で学び、一般の高校と大学を卒業後、アメリカ留学をされています。 その後、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の職員を経験し、現在はフリーランスで英会話を教えたり、コミュニケーションに関する企業研修の講師やアロマの仕事もされています。仕事や生活でiPhoneやiPadをフルに活用されており、英会話の学び方についてもお話しいただきました。 好きなことを本気でしていれば仕事になるとお話しされたことが印象的でした。 2023/12/25・2023年のデジタルを振り返る・参加者:63人 2023年のデジタルを振り返ると、視覚障害者の移動に関するアプリやサービスが登場し、移動の可能性が飛躍的に進化した年でした。 また、生成AIの活用が視覚障害のある方の支援の可能性を広げており、未来のデジタル社会の希望が膨らむ年を振り返りました。 2024/1/22・iPhoneの「コピペ」を便利に使う技・参加者:86人 iPhoneの基本操作講習として、井上 直也さんによるiPhoneの入力カーソルの移動と範囲選択、コピーやペーストの方法を学びました。 見えなくてもとても理解しやすい方法で説明をしていただきました。 2024/2/26・ゲスト:堀内 佳美さん・参加者:80人 ゲストにタイ北部で楽しい読書を広める「アークどこでも本読み隊」という団体を運営している全盲の堀内 佳美さんをお迎えしました。 堀内さんは団体活動や日常生活でiPhoneやパソコンを便利に利用されています。 海外で多言語での利用のお話しや用途別に実際に使っているアプリを多数紹介していただきました。 また、タイ王国における視覚障害者の職業のお話しも聞かせていただきました。 2024/3/25・ゲスト:大胡田 誠さん・参加者:110人 2024年4月1日から「改正障害者差別解消法」が施行され、民間事業者による障害者への「合理的配慮の提供」が義務化されます。 当法人理事である全盲の弁護士の大胡田 誠さんをゲストにお迎えし、スクリーンリーダーで利用が困難なホームページやサービスのアクセシビリティ面での影響や対応方法などをわかりやすくお話していただきました。 (総評) 視覚障害支援に関わる先人たちから多くの知見を学ぶことができました。4月以降は司会者に視覚障害以外の分野に詳しいメンバーも加えて、基本的な使い方の指導等と合わせて過去に登壇いただいたスペシャルゲストとのさらなる深掘り対談やさまざまなテーマを設定して変化に飛んだ対話会を継続していく予定です。 ●NEXT VISIONセミナー 2023/10/21 第10回NEXT VISIONセミナー パラスポーツから考える共生社会  講師:初瀬 勇輔  参加者:42人 内容:秋と言えば、食欲、芸術、スポーツといろいろ楽しみがありますが今回はパラリンピック柔道元日本代表の初瀬勇輔さんをお迎えしてパラスポーツと共生社会についてお話いただきました。 競技としてのスポーツだけでなく、趣味として楽しむスポーツ、高齢になっても続けられるスポーツ、見えなくても見えにくくても誰にでもできるスポーツなど、スポーツにもいろいろあります。 このセミナーを通じてスポーツから広がる共生社会を参加者と一緒に考えました。 ●企業向けセミナー  4件 ●研修  10件(専門学校、高校、患者団体など) ●見学  52件(患者団体、企業、個人など) ●「私の見え方・見えにくさ」伝え方講座  本講座は少人数の対面での講習であり、新型コロナ感染拡大対策継続のため開催できませんでした。  ●寄り添い方講座  本講座は対面での講習であり、新型コロナ感染拡大対策継続のため開催できませんでした。 ●第5回視覚障害者雇用の未来を考えるフォーラム 会場参加者:50人、オンライン参加者:213人 2013年に政府が改定した「高年齢者雇用安定法」によって、2025年4月に65歳までの雇用確保が義務づけられることになりました。 そこで、今回はシニア世代にスポットを当て、第1部は定年後も第一線で活躍されている3名の当事者からの生の声をお聞きしました。 第2部では、パネルディスカッション形式にて、当フォーラムの大きなテーマでもある「視覚障害者の就労についての現状と課題、そして未来への可能性」について、今年は第1部の発表から見えてくる「今後、増加が見込まれる視覚障害シニア社員の働き方」を含めて意見交換会を実施しました。 また、会場では新型コロナウィルス感染対策を行い、会場参加も含めたハイブリッド形式で下記のとおり開催しました。 【日時】2023年11月23日(祝・木)13時00分~16時00分 【会場】中山記念会館 1階 大会議室     〒652-0802神戸市兵庫区水木通2丁目1番9号 【主催】社会福祉法人日本視覚障害者団体連合、公益社団法人NEXT VISION、特定非営利活動法人神戸アイライト協会、視覚障害者就労相談人材バンク 【協力】社会福祉法人兵庫県視覚障害者福祉協会、一般社団法人神戸市視覚障害者福祉協会 ●先進的な取り組みに学ぶ企業の合理的配慮とアクセシビリティ~見えない、見えにくい社員も共に働く環境の実現をめざして~ 参加者:198人 近年、企業の中ではダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)という考え方が注目されてきています。 企業の成長のためには、異なるバックグラウンドを持つ人々を受け入れるダイバーシティと、個々人の適正に合わせた環境を作るインクルージョンが欠かせません。 昨今のICTの進化により、視覚に障害があっても、ICTを使って様々な分野で働く人が増えてきました。 適切な環境と支援、周囲の理解があれば、たとえ途中で視覚に障害が生じても働き続けることが可能です。 本イベントでは、視覚障害当事者と人事部または上司の方がペアになって登壇し、それぞれの視点から、具体的にどのような支援や環境作りをしてきたか、お話しいただきました。 視覚障害当事者のみならず、視覚障害のある社員の能力が発揮できるような環境づくりを知りたい方々にとっても一助となることを目指して下記のとおり、開催しました。 【日時】2024年3月10日(日)10時00分~12時00分 【開催形式】Zoomによるオンラインイベント 【主催】認定NPO法人 視覚障害者の就労を支援する会(タートル)、公益社団法人 NEXT VISION ●視野障害者の安全運転支援プロジェクトセミナー 視野障害者の安全運転支援プロジェクトの啓発活動として下記セミナーの開催に協力しました。 2023/9/6(日)19時00分~20時00分 未来の移動革命:自動運転が切り拓く未来 講師:髙橋政代先生 要旨:自動運転は我々の想像を超えて発達し、サンフランシスコでは無人タクシーが操業を始めるそうです。 自動運転は、交通事故の防止や交通渋滞の解消、エネルギー効率の向上 など多くの利点をもたらします。 また、公共交通や物流など幅広い分野においても大きな影響を与え、移動障害と言われている視覚障害者の生活にも寄与することが期待されます。 この講演を通じて、未来の移動革命の可能性や安全性について、一緒に考えてみませんか? 開催形式:オンライン 参加人数:233人  2023/11/30(日)19時00分~20時00分 最新の運転支援システムの体験会:視野障害者を対象として 講師:伊藤 誠先生 要旨:プロジェクトの一環として、2023年11月上旬に視野障害のある方を対象とした実車体験実験(体験会)を開催しました。 体験会では、視野障害のある方にご自身の見え方を確認していただくとともに、模擬市街路を使って実際の道路の環境で市販されている自動車に乗車いただき、運転支援システムを体験していただきました。 本セミナーではその結果を紹介し、現状の運転支援システムが視野障害のある方の運転にもたらす効果と今後の課題について考察します。 開催形式:オンライン 参加人数:85人 2024/3/9(土)11時00分~12時00分 緑内障ってどんな病気?〜安全運転に必要な、ためになる話 講師:國松志保先生 要旨: 国内の失明原因で最も多いといわれている緑内障。日本では40歳以上の20人に1人が緑内障であると報告されています。 緑内障はゆっくり進行し、痛みもなく、多くの場合は末期になるまで中心視力が保たれ、自覚症状がありません。 そのため、視野狭窄があることに気づかず車の運転を続けるケースがあります。 緑内障は定期検診などで病気を発見し、治療を行うことにより、進行が遅くなり、失明する怖い病気ではなくなります。 また、安全に運転を続けるためには、自分の見え方を知ることが大切です。本セミナーでは、ドライビングシミュレータを使用して安全運転の指導をしている「運転外来」の最新のデータをご紹介しながら、緑内障についてお話します。 開催形式:オンライン 参加人数:124人 (総評) 今年度は新型コロナ感染対策を行い、ビジョンパークや外部の会場を使ったセミナーや見学研修を再開しました。また、これまで同様にオンラインも活用しながらセミナーを開催したことで、居住地に関係なく、すべての方が情報を得る機会を提供することができたと考えます。 コロナ禍で実習ができなかった視能訓練士を目指す学生さんにもビジョンパークの見学をしていただくことができ、卒業後の実践に必要な知識の習得につながったと考えます。 さまざまな立場の人々が必要とする情報や知識を適切なタイミングで提供できるよう、次年度以降もセミナーや見学研修の受け入れを予定しています。 3)ネクストビジョン歌会 対面による開催となるため、今年度は新型コロナウイルス感染対策を重視した結果、実施できませんでした。 (2)当事者向け体験事業 見えない・見えにくい方を対象として、スポーツや映画鑑賞など様々な文化体験をしてもらい、晴眼者と同じように趣味や生きがいを見つけて社会生活を楽しむ機会を設けることで、見えない・見えにくい方の社会復帰、社会の戦力化を支援する活動等を行いました。 1)eスポーツ 第4回G-1グランプリ ゲームのアクセシビリティ(障害者補助機能)機能の紹介や、ツール活用などの工夫・アイデアを共有し、ストリートファイター6体験ワークショップを行うなど、障がいのある人・障がいのない人への遊び方をレクチャーするイベントを下記のとおり、実施しました。  ワークショップ参加者:4名、オンライン参加者:49名(うちエントリー:10名)   【日時】2024/1/20(土) 【場所】神戸アイセンター・ビジョンパーク 【賞名・受賞者名】グランプリ作品賞 Haru キッズ作品賞 つか君 特別作品賞 越前 【主催】公益社団法人 NEXT VISION、特定非営利活動法人 Inclusive Fellowship Promotion、視覚障がい者ライフサポート機構 “viwa” 【協賛】株式会社Studio Gift Hands 【協力】株式会社ePARA 写真:2枚 【北村氏(左)が参加者(真ん中)にレクチャーする様子とMCの相羽氏(右)】 【グランプリをとった盲児が左手にトロフィー、右手に副賞で購入したソフトを持つ様子】 (総評) 社会処方の一環として、ゲームを通したコミュニケーションや社会参加を支援する企画で、視覚障害者や肢体不自由の当事者たちによるアイデアを共有することに始まり、ゲームが持つ社会性や教育効果について当事者でもある教育者や当事者とゲームのアクセシビリティ機能の現状や今後の期待などを3時間に渡り対話しました。 本企画を通して、ゲームによる障害種別を超えたコミュニケーション活性化や社会的接続強化といった社会的意義や効果について確かな手応えを感じており、今後社会的処方箋としてゲームの教育効果や社会的・心理的回復効果の検証や障害者が参加しやすいゲーム環境の構築支援やゲーム業界のアクセシビリティの標準化を目指してゲーム開発企業とも連携をしていく予定です。 次年度もeスポーツの実施、ゲームアクセシビリティの知識処方を行い、障害種別を超えた参加者による、ゲームを通した対話文化の醸成を目指します。 2)クライミング 今年度は今後の定期開催に向けた準備として下記のイベントを行いました。 ●ライフ・イズ・クライミング! ~小林幸一郎さん映画上映会&トークイベント~ ゲストにNPO法人 Monkey Magicの小林幸一郎さんをお迎えして、小林さんが出演された映画『ライフ・イズ・クライミング!』の上映会とトークショー、クライミング体験会を行いました。 今回はUDキャストを活用して、視覚に障害のある方には音声ガイドつきで映画を楽しんでいただきました。 参加人数:54人(おとな51人、こども3人) 【日時】2024/2/24(土)  【場所】映画上映・トークイベント会場:神戸臨床研究情報センター(TRI)     クライミング体験:神戸アイセンター(ビジョンパーク) (総評) 本イベント通じて、これまでクライミングをしたことがなかった方、神戸アイセンターを知らなかった方、視覚障害について知らなかった方が集うことで、新たな人脈につながったと考えます。 本年度もクライミングを定期開催することはできませんでしたが、その前準備としてクライミングウォールのメンテナンスを行いました。 また、映画上映会と同時に体験会を実施したことでクライミングの魅力を視覚障害者以外の方にも知っていただくことができたと思います。 今後は定期開催以外の開催形式の検討も含めて、クライミングの実施に向け、準備を進めます。 3)体幹トレーニング 講師:山野上 優先生 今年度は毎月1回の定期講座としたことで年間を通じて8名の方が参加されました。 (総評) オンラインを活用し画面を通して、あるいは音声のみの指導で運動を行っていただくことが可能で、ご自宅だけでなく外出先か参加された方もいました。 今後も年齢や性別に関係なく、どなたでも行える体幹トレーニングは心と体の健康維持・健康増進の役割を担っていくと考えます。 また、時間を長くしてほしいという要望に応え、1回45分としたことで満足度が高まりました。 4)チャレンジド・ヨガ 2023/5/31 椅子ヨガ+お話し会 参加者:34人(オンライン参加含む) 2023/8/18 チャレンジド・ヨガ10周年特別企画 2023/11/15 椅子ヨガ+お話し会 参加者:35人(オンライン参加含む) (総評) チャレンジド・ヨガの協力を得て、ハイブリッド形式で開催しました。オンライン参加者は外出することなく自宅で気軽に楽しめただけでなく、ビジョンパークでは新型コロナウィルス感染対策として人数は限定しながら対面で行ったことで、病院に来られていた患者さんがヨガに興味を持つきっかけになりました。次年度も継続して、ハイブリッドで開催する予定です。 5)視覚活用訓練  毎月主として第四金曜日にビジョンパークで原田理事が行った訓練事業です。午前を再診枠、午後を初診枠として設定し、初診13名、再診のべ28名対して、有償で訓練を行いました(前年比158%)。対象者の主な眼疾患は、網膜色素変性(17名)、緑内障(10名)等による視野欠損と黄斑変性(7名)等による中心暗点でした。保有視野を有効に活用するためのノウハウについて紹介し、目を動かしながら、そのコツを体得するトレーニングを行なっています。 (総評) 少しずつ再診の方が増え、昨年の1.5倍の利用数になりました。本事業を通して、参加者の方には、それまでに自覚していなかった保有視覚を認識し、生活上の安全と安心を獲得できたと喜ばれています。次年度には、実績について集計し、解析できるように事業計画を立てていきたいと考えています。 6)グラマ体験会 「見ても見なくても見えなくても!ボードゲームグラマ出張体験会 in Vision Park」 一般社団法人ビーラインドプロジェクトと共催で、見ても見なくても見えなくても楽しめるボードゲーム「グラマ」の体験会を下記の通り、行いました。 参加者:13人 【日時】2023/9/1(金)10時00分〜12時00分 【場所】神戸アイセンター(ビジョンパーク) 【主催】一般社団法人ビーラインドプロジェクト、公益社団法人NEXT VISION  イベントの最後には、ビーラインドプロジェクト代表浅見幸佑さんとNEXT VISIONの和田浩一による対談を行い、障害や病気の有無に関係なく誰もが楽しめるゲーム開発の経緯や開発者の想いをお聞きしました。 (総評) ゲームを通して、〇〇だからできない、〇〇だから難しいという固定観念を払拭できる機会となりました。 特にゲームは年齢に関係なく、誰もが楽しめることから啓発活動のツールとして有用ではないかと考えており、今後もさまざまな手法で視覚障害に関する理解を促す啓発活動を継続したいと思います。 (3)カウンセリング事業 1)ロービジョンの集い 内容:見えない・見えにくい当事者を中心にご家族や支援の専門家などが集まり、日常生活での困りごとや情報の共有を行うほか、誰もが気軽に相談ができる集いの場を下記のとおり、提供しました。 【開催方法】オンライン 【対象】視覚障害者、ご家族、その他一般の方などどなたでも参加可能  【開催回数】毎月1回、計12回 2023/4/26 第125回「保険のおはなし~はじめての方にもわかりやすい基礎編~」  参加者:75人 内容:ひとことに「保険」といっても世の中にはさまざまな保障をもつたくさんの保険があります。 今回は、保険のプロをお招きして保険の基礎となる部分をわかりやすくご説明いただき、一般的にむずかしいと思われている保険について、みなさんがどのように考え、選べばよいか、というヒントをお話しました。 2023/5/30 第126回「こころとからだの健康を考える集い」 参加者:12人 内容:暑い夏を迎える前に体調を整えて、鬱陶しい梅雨と暑い夏を乗り越えるために普段の生活の中で行っている健康法や食事の工夫、レクリエーションなどについてお話しました。 2023/6/24 第127回「31文字の光を灯そう 星空歌会」 参加者:34人 講師:佐佐木 頼綱先生 内容:今、短歌がブームでテレビやSNSのトレンドを賑わせています。実は、視覚障害と短歌にも深い関わりがあります。 歴史を遡ると琵琶法師や瞽女(ごぜ)さん、糖尿病やハンセン病、戦争で失明した人々が短歌を使って仕事や人生への思いを表現してきました。 いちばん有名なのはハンセン病で失明した明石海人の短歌です。 『わが指の頂きに来て金花蟲(たまむし)の気配はやがて羽根ひらきたり』 ハンセン病で膨れた指にタマムシが翅を広げる気配を詠んだこの短歌は没後84年経った現代でも多くの人々から愛されています。 今回は、先人たちの短歌を学び、参加者も短歌を詠みました。 2023/7/25 第128回「将来の夢や進路を考える集い」 参加者:15人 内容:進学や就職について考えている方などどなたでも参加可能で、支援者の方からも情報を提供していただきました。 2023/8/15 第129回「便利なアプリで新たな未来を作りましょう!」 参加者:82人 内容:スマートフォンやタブレットがより豊かな生活を送るためのツールとなることは皆さんもよくご存知だと思います。 そして、革新的なテクノロジーで開発されたアプリは見えない、見えにくい方だけでなくすべての方の生活や学習をお手伝いしてくれます。 今回の集いでは、デジタルラウンジでおなじみの井上直也さんにお越しいただき、参加者と一緒にアプリについて意見交換をしました。 2023/9/26 第130回 「家事や趣味を楽しむ集い」 参加者:16人 内容:いろいろな道具や方法、アイデアで家事を楽にこなしたり趣味を楽しむことができます。 ちょっとした工夫や便利グッズ、おすすめの趣味について情報交換しました。 2023/10/10 第131回「バイオリニスト白井崇陽さんの『マルチアングル配信ライブ』への挑戦」  参加者:77人 講師:白井崇陽さん 内容:「見えても見えなくても聞こえなくても、誰でも楽しめるライブエンターテイメントを作り上げたい」という想いから試行錯誤を続けてきた白井さんが行きついた一つの答え、それが、「マルチアングル配信ライブ」でした。 視聴者が自由にアングルを選択できるというライブですが、どんな楽しみ方ができるのか白井さんからその魅力をたっぷりお聞きしました。 2023/11/28 第132回「人生を語り楽しむ集い」 参加者:16人 内容:日常生活や仕事を通じて蓄積してきた経験やノウハウは貴重です。今回は、参加者 ご自身の体験談、最新情報の提供などみなさんのお話をお聞きしました。 2023/12/5 第133回 「65歳の壁、65歳問題を乗り越えるコツとヒント」 参加者:260人 内容:身体障害者手帳を持ち、自立支援給付を受けている方は65歳になると介護保険制度への移行をすすめられます。介護保険が優先されるってどういうこと? どんなサービスが受けられるの?受けられなくなるサービスはあるの?費用負担はどうなるの?・・・など、いろいろ疑問があり、とても不安です。 今回は知っておくと便利な情報や手続きのヒントを行政の方や相談支援専門員さん、実際に相談を受けている方などからお話を聞き、65歳の壁、65歳問題について考えました。 2024/1/30 第134回「見えない、見えにくい子どもさんを持つ親の集い」 参加者:8人 内容:教科書が読みにくくなってきたけれど、どんな器具を使えばいいの?テストはどうやって受けたらいいの?通学が不安だけど、ひとりで大丈夫?など、いろんな疑問や不安があります。 学習のことだけでなく日常生活の工夫など、情報共有しました。 2024/2/8 第135回「映画を楽しもう!~見えない人も見えにくい人も見える人も一緒に映画を楽しめます~」 参加者:99人 講師:林田しげるさん 内容:映画館で音声ガイド付きの映画を鑑賞できるアプリ『UDCast(ユーディキャスト)』『HELLO!MOVIE(ハロームービー)』についてお話をお聞きしました。 アプリ対応の映画であれば、ご家族やお友達と一緒に映画館で映画を楽しめます。 日本ライトハウスの林田しげるさんに、映画用音声ガイドアプリについてと、映画の楽しみ方をお話いただき、参加者からも最近観たおすすめの映画やこれから観たいと思っている映画についてもお話いただきました。 2024/3/26 第136回「仕事や家族のことを考える集い」 参加者:17人 内容:職場や日常生活での工夫やアイデア、周囲の人との関わり方など知っていると生活が楽しく便利になる情報を共有しました。 盲学校の先生からも入学の条件や卒業後の進路・就職先について情報提供がありました。 (総評) 2022年度に引き続きオンラインにて開催しました。オンライン開催となり、参加者が増えたことで本来の目的である生活での困りごとや悩みを誰もが気軽に相談ができるという雰囲気が失われてしまう可能性があったことから、テーマごとに参加者を限定し、オンラインであっても話しやすい環境を作り、心理的安全性を担保しました。 今後も誰もが必要な情報に、必要な時につながるように、対話の機会を提供したいと考えています。   2)相談コーナーの運営 神戸アイセンターでは、「神戸アイセンター病院×ビジョンパーク連携カード」という連携カードによって神戸アイセンター病院の医師や視能訓練士、看護師などがロービジョンに関する情報提供が必要と感じたときに連携カードを発行する取り組みを行っています。 2023年度も昨年度に引き続き、対面による相談だけでなく、オンラインを活用した相談を支援機関・教育機関と連携して行いました。 【(表1)相談件数】 2023年度の相談件数は、連携カードありの相談が353件、連携カードなしの相談が709件、合計1,062件となりました。(表1) 2022年度は連携カードありの相談が425件、連携カードなしの相談が799件、合計1,224件だったので2023年度の相談件数は約13%減となりました。 全体の件数は減少傾向にあるものの連携カードによる相談と比べ、連携カードなしの相談が約2倍となっており、病院からの紹介がなくても相談に訪れる方への情報提供ができていると考えます。 【(図1)連携カード有無による相談件数(割合)】 【(図2)相談者の年代(割合)】 また、連携カードなしの相談には近隣の病院・クリニックからの紹介(2件)が含まれていました。(図1) 対応した相談者の年齢については、60歳代が18.9%、70歳代が20.9%、80歳代が19.1%、90歳代が2.9%となっており、60歳代以上で6割を超えていました。(図2) 【(図3)相談者の疾患名(割合)】 【(図4)相談で提供した情報の内容(割合)】 【(表2)相談で提供した情報の内容(件数)】 対応した疾患は網膜色素変性が39.3%、緑内障が24.7%で、全体の6割を超えました。 相談を受けて提供した情報の内容は多岐に渡りますが、日常生活に関する相談が29.9%、読みに関する相談が20%、身体障害者手帳や障害年金に関する相談が14.6%、歩行に関する相談が12.4%でした。 それぞれの相談件数は表2をご参照ください。 【(図5)紹介した支援機器・用具(割合)】 【(図6)紹介した支援機関・団体(割合)】 相談を受けて紹介した支援機器や用具は、携帯端末・アプリが19.4%、拡大読書器が17.2%、白杖が13.5%でした。(図5) それぞれの紹介件数は表3をご参照ください。 なお、表2、表3はそれぞれ件数ですが、相談者の困りごとや悩みが一つではなく重複していることがわかりました。このように多岐に渡る相談内容に対応するため、下記の支援機関や団体をご紹介しました。 相談者は支援機関や団体につながることでご自宅に戻られてからもお住いの地域で必要な支援やサービスを継続して受けることが可能となります。 神戸市の方には神戸アイライト協会、神戸市以外の兵庫県の方には兵庫県視覚障害者福祉協会や日本ライトハウスを紹介することが多くなっています。 また、全国から来られている方に対しては各都府県の眼科医会が中心となって発行しているスマートサイトをお渡ししています。(図6)(表4) スマートサイトは各都府県で内容は異なるものの必ず相談窓口が記載されており、病院を再受診されない方にも最低限の情報提供を行えるものです。この情報をきっかけに、かかりつけ医の下で適切なロービジョンケアが行われることを期待します。 【(表3)紹介した支援機器・用具(件数)】 【(表4)紹介した支援機関・団体(件数)】 また、紹介する支援機関や団体がビジョンパークで直接相談を受けてくださる活動が定着しており、2023年度は13機関・団体が計289回の相談を行いました。(表5)。 新型コロナウイルス感染対策として対面相談を控えた団体が、そのままオンライン相談を行っているケースもあります。その場合の利点はビジョンパークに職員が来なくてよいので支援機関・団体側の負担が軽減され、日時を限定することなく、いつでも相談を受け付けてくださることです。 全体的には、相談コーナーの開設回数は前年の235回から約23%増の289回となっており、対面による相談対応は増加しています。 【(表5)支援協力機関・団体と相談コーナー開設数(回)】 (総評) NEXT VISIONは眼のワンストップセンターである神戸アイセンターの一機関として、病気の治癒を目指す最先端の医療(cure)と同じレベルで、すべての人が自律して自身の人生を自らの意思で選択できることを目指す支援(care)を重要と考えます。 視覚障害の有無に関係なく、市民が知りたい情報、必要な支援をお知らせすることが使命であり、情報障害者をなくすことが市民のWell-beingの向上につながり、さらには視覚障害に対する理解を深め、誰もが暮らしやすい街づくりにつながるものと考えます。 市民お一人お一人が『自分らしく生きられる、やりたいことを自分でできる』社会の実現を目指して、今後もさまざまな手段と方法で相談支援業務の充実を図ります。 3)遠隔支援サービス 本事業は、代表理事の仲泊が2017年度〜2020年度に行なったAMED研究の一般事業化です。 一般眼科に通院する視覚障害者に対してテレビ電話を介して情報提供に取り組みます。 需要はあるものの、全国的に広がりを見せているオンライン診療との住み分けが難しく、とくに持続可能な資金調達の点で課題が大きいままとなっています。 2022年度ふるさと納税の活用を試みましたが、それも途上で立ち止まったままとなっています。 2023年度に開業した神戸iクリニックでのロービジョン相談も、受診者数が伸び悩んでおり、当法人としての本事業は、休止したままの状態で現時点での進捗はありません。 (総評) 神戸iクリニックの運営が軌道に乗るまでは、様子見を続けるしかありませんが、できる協力体制については、今後も積極的に提案し続けて参ります。 (4)研究開発事業 情報化社会が進む中で見えない・見えにくい方の生活・就労支援に寄与する最新テクノロジーに関する研究開発を行い、その成果を社会還元することにより、見えない・見えにくい方の社会復帰・社会戦力化支援に資することを目的とします。 1)眼球運動異常による読書困難の色フィルターによる支援  色フィルターによって読書困難が改善するという報告があります。 しかし、その科学的根拠は明確ではなく、眼科保険診療の中でこれを薦めることは現時点では困難です。 そこで、当法人の情報提供事業としてまずは、色フィルターが読書困難を改善できるかについての経験を積み、これをもとに研究事業として行なっていくための準備を行います。とくにこのような支援の対象となる方の中にはいわゆる眼筋麻痺とは異なる種類の眼球運動異常が認められるという報告もあり、この両者を比較できるように研究計画を立てていく予定です。 (総評)  対象となる方を継続的に探している状況です。子供を対象に含むため、倫理審査におけるインフォームドアセントの書式を設定し、審査申請中です。 2)視覚障がい者職域拡大プロジェクト 強みを生かす!視覚障がい者、活躍の場の拡大へ  株式会社資生堂による令和3年度のisee! "Working Awards"での入賞アイデアへの協力事業です。 同社に入職された2名の視覚障害者の社内サポートとその広報活動に対して、毎月一回のミーティングに初瀬理事、仲泊理事、山田、和田が委員として参加し、継続的なアドバイスを行いました。 その結果、当該社員の職場定着が実現し、同社による障害福祉業界での事例報告を就労支援フォーラムおよびisee! "Working Awards"で行うことができました。 (総評)  資生堂社内の検討により、定期ミーティングの継続は終了となり、事業としては休止しました。 3)視野障害を有する者に対する高度運転支援システムに関する研究  本事業は、COI-NEXT(研究代表:東北大学眼科)による研究費助成事業の一環として行われているものです。 眼球運動計測システムの一部を成す暗室の設置が完成し、基礎実験を繰り返しております。また研究開始のための倫理審査を立命館大学に申請中です。 (総評) 予定の被験者データの取得には至りませんでしたが、実験装置のセットアップは終わり、すでに予備実験を繰り返している段階ですが、倫理審査の承認がまだ得られていないため、実際のデータ収集には至っておりません。 2.視覚障害者に対する間接支援事業(公益目的事業②) (1)コンテスト事業 1)isee! "Working Awards"2024 今年で8回目となる「isee! "Working Awards"」は、「就労」に焦点をあて、視覚障害者(見えない、見えにくい人)がどのように働いているのか【事例】、また、どうすれば働けるのか、あるいはどんな働き方ができるか【アイデア】を募集しました。 応募された【事例】と【アイデア】を審査員に選んでいただき、広く社会に発信することで、視覚障害者の社会参加、就労、ひいては社会の戦力として働き、社会の損失を軽減させることを目的としています。 今回は、多様性と認知の広がりを期待して、ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」で下記の通り、開催しました。 【日時】2024/3/10(日)13時30 分~16時00分 【場所】ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」 東京都港区海岸一丁目10番45号 アトレ竹芝シアター棟 1F 【内容】完全に光を遮断した暗闇の中での「isee! "Working Awards" 2024 受賞者発表・授賞式」 鍵盤奏者の武久源造氏によるジルバーマンピアノの演奏 「視覚障害者の就労について」スペシャルトーク 【配信方法】YouTubeライブ配信、YouTubeアーカイブ配信 【現地参加者】受賞者・関係者・報道関係者 【主催】立命館大学/東北大学COI-NEXT:「みえる」からはじまる、人のつながりと自己 実現を支えるエンパワーメント社会共創拠点/公益社団法人 NEXT VISION 【後援】公益社団法人 日本眼科医会 【協力】一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ 当日の参加人数、YouTube視聴数は下記の通りです。 会場参加数 受賞者  14名 関係者  12名 審査員  7名 報道関係 2名 合計   35名 ※受賞者・関係者・報道関係者のみ リアル視聴 視聴回数 338回 最大同時接続数 93名 平均時間 22:47 合計時間 128:26:02 受賞者および入賞者と授賞内容は下記のとおりです。 【事例部門】※エントリー順、敬称略 ●MIP賞 NECグループ視覚障がい社員コミュニティ 社内コミュニティが果たす役割の模索と業務スキル開発プログラムの実践 ●MIP賞 参天製薬株式会社 Core Principle & CSV 視覚障がい者とともに働くための意識改革!研修を自社開発し、海外を含めた全社員対象に実施 ●MSP賞/日本眼科医会賞 株式会社ラック サイバー・グリッド・ジャパン 次世代セキュリティ技術研究所 視覚障害エンジニアの人材育成と各自の経験・スキルの強みを生かし活躍できる環境の構築 ●MEP賞 中村 優子 飲食店で周りと自分の特性を活かした働き方のかたち 芳村 涼介 自分の強みを活かして視覚障がい者の業務領域を広げる「研究職としての働き方」 ●入選 平野 雅裕 新型コロナによるマッサージ室閉鎖 オンラインへの引越し 出会いと広がりの始まり 東海林 直 フルリモート勤務による事務職の事例 社内障がい当事者グループ 障がい当事者が創るチャットグループ 一般社団法人MiNaiラボ 視覚障害者向け調理イベントの開催 三川 草平 大量の脅威情報の分析に、PythonとSQLを使って業務範囲の拡大へ 【アイデア部門】※エントリー順、敬称略 ●価値転換賞 中野 恵梨華 試食モニター ●価値転換賞 福﨑 あみ 香りで記憶を蘇らせるオーダーメイドの調香師 今村 友香 視覚障害者によるフレグランスブランドをつくる 毛利 元紀 地球科学を駆使したユニバーサルなジオツーリズムによる観光振興と新たな業態・サービスの確立と提供 ●環境整備賞 小林 那波 スポーツイベントを通じて視覚障害を知る機会を作る 村瀬 智子 インサイドセールスでコミュニケーション能力を活かす:視覚障碍者の職種拡大 神田 信 視覚障碍者単独移動少しでも安全確実に。幸せのハンカチと白杖利用 ●ビジネスプラン賞 永嶋 昭廣 視覚障碍者が作業できる「お米ポケットパン」の製造のために 前川 浩一 指先の文字等を読み上げるデバイス ●日本眼科医会賞 三川 草平 ChatGPTを使って、言葉だけでPower Pointのスライドを作成する ●入選 中村 優子 エンタメでもう一度生きる力を育てるvision Island(ビジョン・アイランド) 瀧口 はるか 調香師さん 田中 愛梨 視覚障害者のラジオ局 伊藤 あさひ 目の不自由な方のカウンセリング 玉本 優奈 視覚障がい者と一流シェフのコラボレストラン 野田 萌乃佳 事情聴取の補助、捜査協力 岡本 真依 視覚障がい者、健常者問わず誰でも使用出来る電話機 立岡 早苗 マークで世界を広げよう!! 三谷 まりん 視覚障害者マーク 川本 恵里佳 アロマセラピーサロンを開く 坂本 朱柚 視覚障がい者とワイン 松井 利樹 番組モニター 鞘師 弘一 コンサルタント会社「街の四季の香りを作る会社」の設立~あなたの街の香りを見える化します~ 野村 真希 いい香りで幸せになろう!! 朝倉 花凜 眼科とロービジョンケアのお繋げ役「眼科のカウンセラー」 西海 望夏/宮川 美結/藤井 夢将/三木 蒼太 i see! 温泉♨ 包 伊楽岐 マジシャン 【写真:isee! "Working Awards" 2024 表彰式 集合写真】 (総評) 本事業は就労事例を収集するだけでなく、新たな視点で職業・職域を開拓することが可能な事業であり、本事業を通じて収集した就労事例やアイデアはさまざまな企業の事業につながる可能性があります。 視覚障害者の就労事例とどうやったら働けるかあるいはどんな仕事ができるかというアイデアの公募は企業や一般市民へ視覚障害者の就労について知るあるいは考える機会となり、視覚障がい者の就労の機会拡大、雇用創出を促進し、認知を高めることにつながると期待されています。 2)視覚障害者による視覚障害者用住宅のインテリアデザインコンテスト  視覚障害者用住宅のインテリアデザインのあり方について、広く募集し、有識者による評価を行うことを予定しておりましたが、資金を得ることができず、中止としました。 (総評) AMED研究資金を獲得できず、研究事業としては中止しましたが、本件については、今後も情報収集に努めていく予定です。 3)サンキューカードを使った周知啓発  見えない、見えにくい方の移動を多角的に支援するために正しいガイドの仕方を一般の方に周知するとともに、一人でも多く就労・就学で困っている視覚に障害のある方を見つけることを目的に配布しました。 また、視覚に障害のある方を見つけ、必要な情報・支援につなげる活動を見えない、見えにくい視覚に障害のある方にお手伝いいただくことで活躍の場を広げる効果もあります。 【カード画像:おもて面・裏面】 配布する地域は視覚障害者の活動地域となるため全国であり、昨年度に引き続き、下記団体等を通じて配布するほか、個人でご希望の方には郵送にて配布しました。 特定非営利活動法人タートル 社会福祉法人日本ライトハウス 情報文化センター 国立神戸視力障害センター 堺市健康福祉プラザ 兵庫県視覚障害者福祉協会 日本網膜色素変性症協会 日本視覚障害者団体連合 神戸市立盲学校 兵庫県立視覚特別支援学校 埼玉県立盲学校 岡山県立盲学校 社会福祉法人神戸市社会福祉協議会 神戸市立点字図書館 非営利活動法人神戸アイライト協会 株式会社システムギアビジョン 株式会社尼崎眼鏡院 HOT POTの会 さらに、東北大学COI NEXT「みえる」からはじまる、人のつながりと自己実現を支えるエンパワメント社会共創拠点に参加することで配布先および配布枚数の増加を図りました。   (総評) カードを配布された一般の方にとっては、視覚障害者への声のかけ方や手引きの仕方を知る機会となり、社会貢献の一助となる可能性が生まれたと考えます。 isee! "Working Awards"のアイデアから生まれた本事業は、さまざまな用途に使えるオリジナルの情報提供カードであり、東北大学COI NEXT「みえる」からはじまる、人のつながりと自己実現を支えるエンパワメント社会共創拠点に参画する企業・団体に広がる可能性があり、今後も継続配布が期待されています。 (2)講演・セミナー事業  1)被災視覚障害者支援・避難所疑似体験セミナー  3回計画したうち、8月の回は新型コロナ感染拡大対策のため中止となり、5月28日と11月18日にビジョンパークを避難所に見立てて、スマートフォンのアプリを使っての移動(ナビタグ)、掲示物の判別の体験、さらに簡易トイレの設営や非常食の調理および手回し式の充電器の体験、遠隔音声ガイド(アイコサポート)の体験を行いました。 5月には2名、11月には1名の参加者がありました。 (総評) 一度に体験できる人数には限りがあるのですが、応募される方が非常に少なく、周知が不足していると思われます。 参加費4,000円では元がとれない事業ですが、社会的な意義は極めて大きく、これを機に他の事業体へも拡散されることが期待されます。 2)ポイントマスター!ロービジョンケア外来ノート行間セミナー  「ポイントマスター!ロービジョンケア外来ノート」をテキストとした有料webセミナーを6月から3月までの毎月1回行いました。 本年度は、各章ごとに関連する第一人者となる専門家を講師に招聘して、お話を伺いました。ライブの参加者数も昨年よりも多く、会員は205名となり、年会費として約140万円を得ることができました。 (総評) 今回で4年目となる有料セミナーです。昨年度までとは異なるかなり専門性の高い内容で、盛り上がりました。 テキスト執筆者には、本年度は各セミナーでの指定質問者となっていただき、さらにはテキストの第二版を執筆いただいて2月に出版に漕ぎ着けました。 次年度は、また基本に戻って執筆者を講師に行う予定です。 3)ロービジョン支援ホームページの運用  COI-NEXTの研究費助成を活用して、NEXT VISIONのサーバー上に移設したロービジョンケアの用語説明と施設リンクを目的とした ホームページ(https://nextvision.or.jp/shikakuriha/)を維持運営しました。 リンクされた施設情報の更新を随時行って参りました。 (総評) 安定したホームページ運用ができています。 今後は、動画をコンテンツとし、そこへのリンクを豊富に持つページにさらに進化する方向で努めていく予定です。 4)日本眼科医会連携  地方においては視覚障害者が最初に受診する可能性が高いのは地域の眼科クリニックであり、全国の眼科クリニックの開業医が所属する日本眼科医会と連携しました。 引き続きisee! "Working Awards" での眼科医会賞の追加や日本眼科医会HPとの連携などを通して開業医の眼科医への情報発信を継続予定です。 (総評) 視覚障害者の最初のアクセス先である眼科の開業医が所属する日本眼科医会との連携は、視覚障害者を情報障害に陥らせないためにも大きな意義があります。 今後もさまざまな文脈で連携を深める予定です。 5)視覚障害者体験VR研修  視覚障害者が周囲の人に自分が視覚障害者であり困難さを的確に伝えられない背景には、視覚障害の種類や困難さの多様性を周囲のメンバーが認識しにくい背景があります。 VRを利用した教育コンテンツでは1人称で困難さを理解することができるため、支援者教育の強力なコンテンツとなり得るため、VRコンテンツの開発の指導を行い、教育ソフトを開発しました。 (総評) 現在5台購入予定で今後は研修ツールとして実践活用予定です。 2024年4月からは民間企業でも合理的配慮の提供が義務化しており、今後本研修の社会的意義はより高まると感じています。 (3)支援者向け体験事業 1)パッチ・アダムス招致企画 夢の病院からビジョンパークができるまで  豊かに生きるための知識と習慣の処方箋として、人生100年時代を人が健やかに生きるため、心と体がウェルビーイング(ご機嫌)になるための考え方や行動習慣などをウェルビーイングを実践する専門家に学び、対話を通して学ぶイベントを2022年に実施しました。 2023年度はイベントを実施しませんでしたが、NEXT VISIONが行う活動を通じてウェルビーイングの言語化を図りました。 (総評) これまでに構築した医療、教育、福祉の領域をこえたつながりとウェルビーイングの言語化を今後の施策の上位目標として掲げ、哲学対話を進めていく予定です。 2)TEAM EXPO2025 共創チャレンジ企画 ナビゲーション・タグ(ナビタグ)で未来を変えるプロジェクト ナビレンスやコード化点字ブロック、shikAIなどは主に点字ブロックに情報を付加する二次元コードであり、本事業では設置の検討(実証実験)と普及活動を行いました。 これらの二次元コードは白杖および点字ブロックと併用することで安全、便利に使用でき、視覚に障害のある方だけでなく誰もが利用可能なルート案内等の情報提供が可能で、二次元コードの総称をナビゲーション・タグ(ナビタグ)と呼び、2024年に開催される神戸世界パラ陸上大会を契機としてまずは神戸市での普及を進め、2025年に開催される大阪・関西万博での運用を目指して活動を行いました。 本事業はTEAM EXPO2025 共創チャレンジにプロジェクト名「ナビタグで未来を変えるプロジェクト」として登録しています。 https://team.expo2025.or.jp/ja/challenge/175 【i see!運動 ナビタグで未来を変えるプロジェクト イメージ画像】 【ナビタグで未来を変えるプロジェクトチームOTAGAISAMA チームメンバー一覧】 現在、16機関・団体、31名のメンバーとオブザーバーとして4団体、4名がナビタグで未来を変えるプロジェクトチームOTAGAISAMA(おたがいさま)として活動しています。 今年度は神戸市のふるさと納税(ガバメントクラウドファンディング)を活用して、ナビタグの認知を高める取り組みとして、三宮駅周辺での3種類のナビタグを併用する敷設方法の実証実験の準備を進めました。 また、ナビタグは点字ブロックに情報を付加する二次元コードとスマホ用アプリを使ったシステムですが、点字ブロックのないところにナビタグを敷設できるか検討するための実証実験を行いました。 実験結果として、限られた空間、閉鎖的な通路などにおいて、shikAI(シカイ)の通常サイズは9×9㎝であるのに対して、その約11倍の大きさのタグを設置することで、タグが見えなくても、スマートホンを床に向けてかざすことでタグの読み取りが可能であることがわかりました。 そこで、神戸アイセンターおよび周辺の限られた空間、閉鎖的な通路などにおいて、サイズの大きなタグ(30×30㎝)を敷設し、実際にルート案内ができるか試行し、現在も検証中ですが読み取りおよびルート案内にほぼ問題がないことが確認できています。 今後は、視覚障害のある方だけでなく、一般の方にも使用していただき、点字ブロックのない場所での実装についてデータの集積と検討を重ねます。 【写真:点字ブロックに貼られたshikAI 通常サイズ(9×9㎝)】 【写真:点字ブロックのない通路床面(幅2m)に貼られたshikAI 拡大サイズ(30×30㎝)】 また、敷設時の規格を統一することで、誰もが使いやすくなるように、ガイドライン(原案)を作成しました。 (総評)  今後は、ガイドラインを標準化するために、ナビタグを供給する企業や視覚障害者団体等と連携することが必要です。さらには鉄道駅バリアフリー料金制度での敷設を実現するに、国交省所管のバリアフリーガイドラインにナビタグおよび旅客施設におけるナビタグ設置ガイドラインが採用されることが必至であり、今後のナビタグ普及拡大の鍵になると考えています。 また、視覚に障害のある方だけでなく、一般市民にも実際に使ってもらい、便利さを実感していただけるように普及を進める必要があり、2025年に開催される大阪・関西万博での敷設を目指し、啓発活動などを継続していきます。 (4)出版事業 1)「プライベートあい~名探偵になってあげないゾ!~」出版プロジェクト 小説あるいは漫画といった親しみやすい形で等身大の当事者を多くの人に感じてもらい、当事者の方には「視覚障害者だからこそ優れている能力がある」というバリアバリューに気づいてもらうことを目的として、出版事業に取り組みました。 しかし、出版社や広告代理店等に持ち込みましたが、実現には至っておらず、次年度以降も相談・交渉を重ねます。 3.収益事業 (1)ビジョンパークを活かした情報発信  本事業は新型コロナ感染拡大対策のため行うことができませんでした。今後も状況をみながらの実施になる予定です。 (2)共同研究 テーマ:「ウェルビーイングを実現する未来型医療とケアの研究」 株式会社日立製作所とNEXT VISIONは、人生100年時代に向けて、一人ひとりが自律し選択できる医療、そして持続可能で全人的な医療、「ウェルビーイングを実現する未来型医療とケア」をめざすためのヒントを様々なゲストとの対話を通して探ってきました。 今回、「人生の意味を探る対話」第4弾として、神戸アイセンター公式キャラクター「テンボー」のお披露目と、生みの親であるヨシタケシンスケさんに公式キャラクター「テンボー」について語っていただくトークライブイベントを企画しました。 障害や病気への無理解・無関心、医療への過剰な依存、医療におけるヒューマニズム欠如、循環型社会の重要性など、共に考えてきたテーマを踏まえ、神戸アイセンターの考え方や理念を深掘りし、より多くの方に知っていただく機会となりました。 【イベント名】一日限りのヨシタケシンスケラジオ〜人生の意味がわかるかもしれない〜 【日時】2024/3/30(土)10時00 分~12時00分 【開催方法】YouTubeライブ配信 【内容】これまでの対話シリーズの開催を通して注目したのが、「笑い」の力。 ヨシタケシンスケさんも自身の展望(テンボー)として、「いろんな笑い方ができる本をつくる!」と宣言されるほど、つらいことや苦しいことほど笑いに変えることが必要であり、生きるコツだと語っています。そこで、より多くの視聴者に関心を持って参加意識を高めていただくために、「笑い」を軸に事前に視聴者からいただいたメッセージや質問を取り上げ、ヨシタケシンスケさんと共に深堀りしました。 【当日の視聴者数】143人 (総評) 今後、就労・就学・娯楽・スポーツなどにおいても枠を超えたテンボー(展望)の提案、SNSによる情報発信に注力する必要があると考えています。 ヨシタケシンスケさんと「テンボー」による「ビジョンパーク」のトリセツ作りも計画しており、「テンボー」と一緒に、一人ひとりが自分の考えを持ち、自分の言葉で語り、きちんと伝えあっていく、そんな「場」を広げていくきっかけになりました。 医療従事者やスタッフが「がんばる」力だけではなく、病気や障害の有無、性別や年齢に関係なく、すべての人が内から力を発揮し、自律して自身の人生を自らの意思で選択できることを支援する「テンボー」を持っていただくことが、本共同研究のテーマである、ウェルビーイングを実現する未来型医療とケアの実現につながると考えます。 (3)コンサルティング シスメックス株式会社が発行する冊子「遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)のお話」の制作に協力しました。 具体的には見やすいレイアウトや文字種や文字色についてのアドバイスとロービジョンケアについての原稿を提供しました。 (総評) 印刷物を作成する際に、内容だけでなく見やすさ、読みやすさについて着目し、意見を取り入れてくださるようになったことは意義のあることだと思います。 今後もこのようなコンサルティング業務をおこなっていることを積極的にお伝えし、情報保障、アクセシビリティの改善に取り組みたいと考えます。   37ページ 4.法人会計 (1)みんなで作るビジョンパーク会議 今年度は寄附、賛助会員、協賛パートナーのみなさまのご支援への感謝の気持ちを込めて下記の通り、大感謝祭を開催しました。 【日時】2023/12/2(土)10時00分から11時00分 【開催方法】オンライン(Zoom)※後日、動画を限定公開 【内容】 1.代表理事仲泊聡よりご挨拶 2.常務理事和田浩一より活動報告 3.スペシャルトーク(司会:副理事長三宅琢) ゲストに神戸アイセンターの活動を応援してくださっている絵本作家のヨシタケシンスケさんをお迎えし、NEXT VISIONの今後の展望についてお話しました 4.理事高橋政代よりご挨拶 (総評) 当日、会場にお越しいただけなかった寄附者、賛助会員、協賛企業の方々にも報告書をお送りし、NEXT VISIONで実施している事業、活動内容を報告すると共にNEXT VISIONの活動やビジョンパークの役割を説明し、継続的にご支援をいただけるよう情報を発信し続けることで法人の運営を安定させ、より多くの視覚に障害のある方と情報を必要とするすべての方への支援活動を行いたいと思います。 38ページ Ⅱ.法人運営 1.理事会 第24回 令和5年6月9日 議題 1.令和5年度の事業報告及び計算書類の承認 2.和田浩一氏理事就任承認 3.理事の任期満了に伴う後任者選任 4.役員報酬規程の改定 5.社員総会の招集と議案等の承認 6.理事長(代表理事)選定 第25回 令和5年6月24日 議題 1.常務理事1名の選定 第26回 令和6年3月15日 議題 1.令和6年度の事業計画及び収支予算・資金調達及び設備投資の見込を記載した書類の承認 2.社員総会の招集と議案の承認 2.社員総会 第21回 令和5年6月24日 議題   1.令和4年度の事業報告及び計算書類の承認  2.和田浩一理事就任承認 3.理事及び監事の任期満了に伴う後任者選任 4.役員報酬規程の改定承認 第22回 令和6年3月15日 議題  1.令和6年度の事業計画及び収支予算・資金調達及び設備投資の見込を記載した書類の承認 39ページ 令和5年度 決算書(令和5年4月1日〜令和6年3月31日) 【表:賃借対象表 令和6年6月31日現在】 【表:正味財産増減計画書 令和5年4月1日から令和6年3月31日まで】 【表:正味財産増減計画書内訳表 令和5年4月1日から令和6年3月31日まで】 42ページ 網膜再生医療元年 公益社団法人NEXT VISION 理事 ビジョンケアグループ 代表 髙橋政代 我々が開発している網膜再生医療がいよいよ神戸だけでなく国内外に広がっていきます。 iPS細胞由来の網膜色素上皮(RPE)細胞移植は剤形を進化させ、安全でよい治療になったと思います。 しかし、手術治療は細胞がどんなによくても完成しません。 専門の眼科医たちが対象患者さんの選び方や手術の仕方などみんなで検討して徐々に完成していくものです。 そこで、我々は数年前から多くの網膜専門の眼科医の先生たちと治療に関して検討する「RPE移植研究会」を開催してきました。 今年度からはその中で治療を実際に行う病院や患者さんを紹介してくれる病院を募っています。 予想外に多くの先生方が協力してくれて、日本の眼科学会あげて治療を完成させようとしております。 先日「日本網膜色素変性症協会」発足30周年記念会でそのようなお話をしたところ、本当に治療になるまで辞めずに研究をしてくれたと喜んでいただき、患者さんの応援の声や喜んでくれる顔がここまで力を与えてくれたと再確認しました。 治療が進化する一方で、再生医療が適する方、適さない方、視機能が上がる方、上がらないけど維持できる方など徐々にあきらかになってきています。 以前からお話ししていることですが、再生医療だけで視覚障害の方のすべての希望がかなえられるわけではありません。 少し良くなった視機能を有効に使うデバイス、視機能を維持できるようになったから確立する生活様式などロービジョンケアの重要性が増してきます。 再生医療を国内外に広めるためには、医師にその治療の説明をしていただく必要があります。 しかし、すべての眼科の先生がiPS細胞の作り方や細胞の安全性データを知っておられるわけではありません。 現在、これらの説明をできるのは世界でも神戸アイセンター病院の医師のみです。 そこで、再生医療の説明をするために最近はやりの生成AIソフトを作りました。 正確な情報だけを使うことで、驚くほどよいソフトとなりました。 いろんな質問に丁寧に何度も言い換えたりして説明します。最近のAIはかなり使えることがわかりました。 さらに、今度はNEXT VISIONで蓄積されているロービジョンケアのノウハウ、ここでしかできない様々な治療と組み合わせるケアをどこでもできるようにならないか、人が変わると同じ事がもうできないとならないためにノウハウをAIに移せないかと考えています。 皆さまにご支援いただくご寄附やご協賛、賛助会員会費だけでなく、ご提供いただくさまざまな情報なども次世代のNEXT VISIONを作るために使わせていただければと思います。 NEXT VISIONの進化系を作るために活動を開始します。今後もどうぞご協力、ご支援のほどよろしくお願いいたします。 裏表紙 Thank you for your support to NEXT VISION 【画像:黒田冨紀子「いろいろな世界」 油彩2017年】