旅客施設におけるナビゲーションタグ設置ガイドライン 1章 はじめに 一般に、視力の低下は40~50歳ぐらいからはじまり、60歳を超えると急激に低下する、車椅子使用者の視点は一般歩行者より40cmほど低い、聴覚障害者は耳から聞く情報は得られないことが多い、日本語のわからない訪日外国人が多いなど、さまざまな利用者が情報コミュニケーション制約を抱えている。 移動等円滑化をめざすナビゲーションタグの整備においては、設備本来の機能を十分に発揮できるようにすることが必要であると同時に、さまざまな情報コミュニケーション制約を抱える利用者も、共通の設備から情報を得られるように工夫する考え方が必要である。ナビゲーションタグは、歩行支援のためのわかりやすさを確保するために、情報内容、掲出位置(掲出高さや平面上の位置など)の要素を考慮することが上可欠である。移動しながら情報を得たい利用者にわかりやすく情報を伝達する基本条件になる。 (1)ナビゲーションタグのガイドラインの作成にあたって このガイドラインは,公共交通事業者等が旅客施設において、視覚障害者等の歩行支援のためのナビゲーションタグを設置する場合の情報提供場所や情報提供内容の目安を示したものである。 (2)ガイドラインの構成 本章ではナビゲーションタグの種別・基本的事項について述べる。 ナビゲーションタグを貼る際の注意事項については、2章で取り扱う。 出発地から目的地までの移動時において必要となる、経路情報・周辺情報・補足情報の内容を3章で取り扱う(情報提供内容) トイレやエレベーター等の個々の設備に関する案内を4章で取り扱う。(情報提供場所) ナビゲーションタグの種別・基本的事項 ◎かならず対応すること 〇積極的に対応すること ◇対応が望ましいもの サインの種別 ナビゲーションタグは、誘導・位置・規制・経路案内の4種の情報を通して、移動する利用者への情報提供を行う。 ・誘導情報:施設等の方向を指示するのに必要な情報 ・位置情報:施設等の位置を告知するのに必要な情報 ・規制情報:利用者の行動を規制するのに必要な情報 ・経路案内情報:現在地から目的地までの経路や道順を示す情報 案内方法 ◎出入口吊、行先、旅客施設吊など主要なナビゲーションタグには、英語で情報入手が可能な設定とすること。 ◎エレベーターその他の昇降機、傾斜路、便所、乗車券等販売所、待合所、案内所若しくは休憩設備(以下「移動等円滑化のための主要な設備《という。)又は公共用通路に直接通ずる出入口の付近に設けられる、移動等円滑化のための主要な設備の配置を表示した案内板その他の設備の付近には、これらの設備があることを案内するナビゲーションタグを設置することを基本とする。 ※主要な設備については第4章で詳しく記載する。 〇ゲート番号の表示や設備の存在を示すためのナビタグは遠方からでも確認できる大きさのものとすること。 ◇外光、照明の逆光や光の反射により、ナビゲーションタグが見にくくならないよう配慮すること。また、サインの背景に照明や看板等が位置すること等により、見にくくないようにすること。 ◇地域ごとの来訪者事情により、日本語、英語以外の言語を併記すること。 乗換経路等誘導時の配慮 ○他事業者間・他交通モードへの乗り継ぎ経路への誘導にあたっては、エレベーターを利用した経路もわかりやすく表示すること。 ◇隣接する他社線、公共空間とは連続的に案内のナビゲーションタグが繰り返し設置されること。この場合、施設設置管理者間で協議調整の上、案内する情報内容を統一し、誘導案内がとぎれないよう留意すること。また、関係者が多岐にわたる等の場合においては、協議会等を設置して検討すること。 2章 ナビゲーションタグの基本的な注意事項 ◎かならず対応すること 〇積極的に対応すること ◇対応が望ましいもの タグを貼る際の注意事項 ◎タグは壁・案内板・床に貼ること。 ◎タグは、どの方向からでも読み取れるように配慮すること。 〇タグの掲出にあたっては、照明の映り込みがないように配慮すること。また、外光、照明の配置により見にくくならないよう配慮すること。 ◇2つのタグを間近に掲出する場合、手前のタグで奥のタグを遮らないように、2つを十分離して設置すること。 貼る位置別の注意事項 壁 ◎タグの前に人がいたとしてもタグが読み取りやすいよう、高さは床から1.8m程度とすること。ただし、床から1.8mの高さに貼れない場合は、この限りではない。 〇タグの掲出高さは、視認位置からの見上げ角度が小さく、かつ視点の低い車椅子使用者でも混雑時に前方の歩行者に遮られにくい高さとすること。 ◇タグの高さは、施設内で統一すること。 案内板 ※原則、すべての案内板にタグを貼ること。 ○誘導サイン類が多い場合、経路を構成する主要な空間部位と、移動等円滑化のための主要な設備にかかるものを優先的に案内すること。 〇タグの高さについてはすでに設置してある案内板に合わせるものとする。 床 ◎床の場合は、原則、視覚障害者誘導用ブロックの警告ブロックの上もしくは、その横に貼ること。 ◎警告ブロックがない箇所(誘導ブロック上)でも、情報提供が必要な場合、必要に応じて貼ることができる。 ◇移動距離が長い場合、目的地までの距離を併記すること。 提供すべき情報と情報量(情報文の長さ・情報提供の頻度)に関する注意事項 ◎タグによる情報量は、可能な限り簡潔に短く、分かりやすいものとすること。タグ1つあたりの情報文の長さは、約200字程度とすること。 ◇詳細な情報(設備内の情報、エレベーターのボタンの情報など)を含み、情報文が長くなる場合は、移動等円滑化のための主要な設備にかかるものを優先的に案内し、なおかつ、詳細な情報を使用者が任意で聞けるようにすること。 ◎案内板等で提供されている視覚情報は、すべての情報を提供すること。 〇視覚情報と聴覚情報における人の情報処理能力には違いがあり、さらに利用者の移動・停止状態、他の通行者との関係を考慮し、その情報量(情報文の長さ・情報提供頻度)に注意すること。 ◎ナビタグの種類が複数存在する場合は、近接するタグで、その情報を伝え連続的に使用できるようにすること。 3章 経路情報・周辺情報・補足情報の内容のガイドライン ◎かならず対応すること 〇積極的に対応すること ◇対応が望ましいもの 経路案内情報の内容 ◎目的地までに必要な情報(距離、経路説明)の案内をすること ◇ルート案内中の、経路の誤りの指摘を行うこと 周辺情報の内容 ◎周辺の情報を案内する際は、「現在地の情報⇒正面の方向にある情報⇒左右の情報《という順番に案内すること。 現在地情報の内容 ◎施設吊称の案内をすること 補足情報の内容 ◇注意喚起情報(柱、ひとごみなど)を案内すること ◇緊急時の避難情報を案内すること 4章 各設備でのガイドライン ◎かならず対応すること 〇積極的に対応すること ◇対応が望ましいもの 一般的な設備 トイレ ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導されたトイレ出入口真上の壁面あるいは床の警告ブロックに、タグを設置し、トイレがあることを知らせること。 ◎男女・バリアフリートイレ別の情報を提供すること。 ◎トイレへのアプローチ、トイレの構造(個室や便器の形状、個数、配置)の情報を提供すること。 〇トイレの個室内(水洗操作の位置など)の情報を提供する場合は、タグを設置すること。 エレベーター ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導されたエレベーターの床の警告ブロックあるいは壁、近傍の案内板に、タグを設置し、エレベーターがあることを知らせること。 〇エレベーターの外側にある乗場操作盤およびかご内にあるかご操作盤あるいは近傍にタグを設置し、ボタンの説明をすること。そのとき、操作盤の下から順に説明すること。特に、緊急ボタンに触れさせないよう、注意を促すこと。 エスカレーター ◎エスカレーター近傍あるいは近傍の案内板にタグを設置し、エスカレーターがあることを知らせること。 ◎エスカレーターの乗り口付近にタグを設置し、行き先及び上下方向を知らせること。 階段 ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された階段前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板にタグを設置し、階段があることおよび階段番号等を知らせること。 〇階段が始まる前に踊り場の数を知らせること。また、行先や上りか下りの情報を知らせること。 ◇階段の幅や高さ等など、注意事項を知らせること。 傾斜路 ◎傾斜路に点字ブロックが敷設されている場合は、傾斜路があること、上りか下りかを案内すること ◇点字ブロックが敷設されてない場合でも、必要に応じて案内すること。 案内板 ◎案内板に書かれた内容を案内すること。 〇情報量が多い場合は、主要施設の情報を優先すること。 案内地図 ◎案内地図の概要を案内すること。 ◎案内は必ず現在地の情報を提供し、その位置から主要施設への方向を案内すること。 駅構内設備 ホーム ◎電車の乗降口下の警告ブロック等あるいはその近傍にタグを設置し、番線および方面の情報を知らせること。また、ホームドアの有無およびホームドアの形式を知らせること。 ◇電車の位置(何号車の何番目)を知らせること。 ◇売店、自動販売機、ベンチなど、ホームに設置されている設備の案内をすること。 改札口 ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された改札口前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板にタグを設置し、改札があることを知らせること。 ◎駅に改札口が2箇所以上ある場合、改札口の吊称(南改札、中央改札)を知らせること。 ◎駅員呼び出しのインターホンの位置について伝えること 〇改札口の横に駅員室がある場合、駅員室の窓口の案内をすること。 券売機および乗り越し精算機 ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された機械前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板、機械そのものにタグを設置し、機械があることを知らせること。 ◎機械に付属している呼び出しボタンの位置を案内すること。 ◇機械のその他のボタンの内容を案内すること。 ◇運賃の情報を利用者の任意で提供できるようにしておくこと。 駅員室 ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された駅員室前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板、駅員室の窓口にタグを設置し、駅員室があることを知らせること。また、呼び出しボタンがある場合、呼び出しボタンの位置の案内もすること。 案内所・情報コーナー 〇視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された案内所前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板、案内所の窓口にタグを設置し、案内所があることを知らせること。また、呼び出しボタンがある場合、呼び出しボタンの位置の案内もすること。 駅員呼び出しインターホン ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された駅員呼び出しインターホン前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板または機器に直接タグを設置し、駅員呼び出しインターホンがあることを知らせること。 駅待合室 〇近傍の案内板、待合室の入り口付近にタグを設置し、待合室があることを知らせること。 駅出入口 ◎地下駅の地上出入口において、その位置を知らせるタグを設置すること。設置場所は、出入口前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板に設置すること。 その他 〇救護所、忘れもの取扱所、両替所、コインロッカー、公衆電話などについては、そのもの又はその近傍にタグを設置し、その存在を知らせること。 空港内設備 ※空港内は点字ブロックの敷設は少ないが、設置されている前提で記載をしている 案内カウンター ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された案内カウンター前の警告ブロック上、加えて近傍の案内板、案内所の窓口にタグを設置し、案内カウンターがあることを知らせること。 ◎視覚障害者誘導用ブロックが敷設されていない場合は、壁に貼り案内カウンターの位置を知らせること。 保安検査場 ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された保安検査場手前の警告ブロック上、加えて近傍の案内板にタグを設置し、保安検査場があることを知らせること。 ◎視覚障害者誘導用ブロックが敷設されていない場合は、壁に貼り保安検査場の位置を知らせること。 〇複数の入り口がある場合は、複数の入り口の上に設置すること。 空港出入口 ◎出入り口を知らせるタグを設置すること。入口の場合は案内カウンター又は呼び出しインターホンまでの行き方を知らせること。設置場所は、出入口前の警告ブロック上あるいは近傍の案内板あるいは出入口上部に設置すること。 ◎出入り口吊を案内すること 商業施設 〇店舗入り口に店舗吊等の案内をすること。 空港カウンター ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された空港カウンター手前の警告ブロック上、加えて近傍の案内板にタグを設置し、空港カウンターがあることを知らせること。 ◎視覚障害者誘導用ブロックが敷設されていない場合は、壁に貼り空港カウンターの位置を知らせること。 〇複数のカウンターがある場合は、各カウンターの上に設置すること。 自動チェックイン機 ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された自動チェックイン機手前の警告ブロック上にタグを設置し、自動チェックイン機があることを知らせること。 ◎視覚障害者誘導用ブロックが敷設されていない場合は、壁に貼り自動チェックイン機の位置を知らせること。 〇複数の自動チェックイン機がある場合は、自動チェックイン機の上に設置すること。 搭乗ゲート ◎視覚障害者誘導用ブロックによって誘導された各搭乗ゲート手前の警告ブロック上、加えて近傍の案内板にタグを設置し、搭乗ゲート番号をあることを知らせること。 ◎視覚障害者誘導用ブロックが敷設されていない場合は、壁に貼り搭乗ゲート番号を知らせること。