目が不自由でも自分で選んだ職に就こう!
子ども達に囲まれて保育士15年目

 幼稚園のころから保育職に就く夢を抱き、短大で資格を取得後、認可保育園で勤務しています。
 子供の命を預かる保育の現場で視力を必要とする場面は少なくはないものの、保護者の理解を得て、複数の同僚保育士と連携を取りながら子どもたちと関わっています。0歳児から預る保育園は主に生活の場であることから、年齢に応じて食事やトイレや着替えの手助けをしたり、配膳や掃除やお昼寝の布団しきというようなことは、家事や育児の経験を生かしておこなっています。また、絵本に点字を貼って読み聞かせをしたり、ピアノを弾いて歌の指導などをすることもできることの一つです。声や衣服のにおいで一人一人を判別し、その日の機嫌や話しぶりで体調を把握したり、危険な行動の前触れを察知できるよう特に気を配っています。
 子どもたちと一緒に遊んだり、共に過ごす時間を積み重ねていく中で、柔軟な子供たちはありのままの私を理解し、理屈ではなく感覚で受け入れてくれるようになります。こちらが頼まなくても「○○ちゃんだよ」と名乗ってくれたり、手を引いて導いてくれたりと、自然なやさしさに助けられる機会も多いです。保育現場において子どもたちが、物心がつく時期に自分とは少し違う人の存在を知り、受け入れようとする感受性をはぐくむことの意義は大きいのではと考えます。今後もこの仕事を継続して行きたいです。

審査員コメント

 保育士の仕事はこどもの安全性の面から見えないことに対するハードルが高いという先入観がありますが、保育士同士の連携や保護者の理解に結びつけられたことが非常に素晴らしい。前例がないために困難にぶつかりながらも、資格を取得し、保育士としてご活躍されています。また子供たちの反応が素晴らしい。小川さんとのかかわりを通して、違いを認め他者に対する思いやりをはぐくむ時間は、真の教育であり、一生の財産となるでしょう。

プロフィール

 

小川 みき
視力は子どものころから光を感じられる程度。
全盲の視覚障がい者が、幼児教育学科の大学に進学した前例はなく、受験の実現までにも時間を要す。保育士資格と幼稚園教諭免許を取得後、実習や就職活動もどうにか切り抜け認可保育園に就職。13年間非常勤保育士として勤務。結婚を機に退職。出産・育児を経て、現在、宮崎市の大坪保育園でパート保育士として業務にあたっている。

おすすめの記事