変わってしまったボディーイメージを相手に見られないという安心感。

 ガン治療のためにボディーイメージが変わってしまった方のケアを視覚障害者が行うことを提案します。例えば、乳ガンの治療でリンパ節郭清を伴う乳房切除を行った場合は、術後の浮腫軽減や運動機能障害予防のため上肢のマッサージや運動療法の継続が必要になります。また、頭髪の脱毛を伴う抗ガン剤の投与中は点滴のサイクルも長く、長時間、同じ姿勢を強いられるため、大変疲れます。こういう場面を、マッサージで和らげます。
 入院中に一度試行し、患者が望むようであれば外来通院時に継続して実施します。顔が見られないという安心感から、多くの不安を吐露することもでき、心の安定という面での効果も期待できます。ターミナルケアとしても有効なのではないでしょうか。視覚障害者の最大の強みでもある“見えにくさ”を生かした就労として、社会に広まることを期待しています。
 もう一つ、“見えにくさ”を生かした就労として、占い師という仕事にも可能性を感じています。理療(あんま、マッサージ、指圧、鍼、灸)を施しながら、占いという“対話”を交えることによって体と心をケアします。人の気持ちや感情はふれる手から伝わるもの。施術後に街ですれ違っても、声を掛けなければ、自分だと気づかれない安心感もあり、何でも話しやすいと思います。

審査員コメント

ターミナルケアの場面でマッサージを提供することは、ガン患者の方々のQOL(生活の質)向上に大変有効であると思われます。超高齢社会に突入した日本において、ターミナルケアや高齢者介護を受ける本人がいかに満足感を得られるかということは非常に重要。そういった場面であはき師の価値が認められれば雇用も広がると思います。

プロフィール

 

橋本 伸子
眼科看護師

石川県にある『しらお眼科』に勤める眼科看護師。視覚リハビリテーション協会会員、ロービジョン学会会員、弱視教育研究会会員、石川県視覚障害者パソコン友の会会員、石川県バリアフリー社会推進賞受賞。

おすすめの記事